AIの導入を検討する企業が増えているが、AIを有効活用する上でカギとなるのがデータだ。質の高いデータをどれだけ多く利用できるかで、AIの分析の精度が違ってくる。

しかし、企業が抱える大量のデータはオンプレミスやクラウドと、さまざまな場所に散在している。こうしたデータをどうやって統合し、AIで利用できる形に整備するのか。

データの管理や統合に注目が集まる中、データ仮想化プラットフォーム「Denodo Platform」の存在感が高まっている。そこで、同製品を提供するDenodo Technologiesの創設者兼CEOであるアンヘル・ヴィーニャ氏に、生成AIをはじめとするAI利用において同社製品が果たす役割について聞いた。

  • Denodo Technologies創設者兼CEO アンヘル・ヴィーニャ氏

2025年のトレンドの対応において「いいポジションにいる」

ヴィーニャ氏は、「2024年は、データ管理において論理的なアプローチをとってきたが、多くの企業にDenodo Platformを選んでもらった。変化が加速する2025年は、企業の生成AIを活用した変革、ビジネス側の機能開発を支援する」と語った。

2025年は、「ビジネス側の要求に応えるためにデータを迅速に提供できること」「企業としてAI、特に生成AIを運用できるようにすること」が新たなトレンドとなっているという。

ヴィーニャ氏は「当社はこれらのトレンドに対応できる、いいポジションにいる」として、以下の4つの点で、企業においてデータの迅速な提供、生成AIの運用を支援できると述べた。

分散化したデータエコシステム

現在、企業のデータはオンプレミス、クラウド、社外のSaaSにある。このようにデータエコシステムが分散する中で、Denodo Platformによるデータレイクの中でレポジトリデータを活用できるようにする。

ヴィーニャ氏は「データシステムの多様化はこれからも続く。その流れにおいて、Denodoは事業にとって意味のある形でデータを統合できる」と語った。

変化のスピードについていくために求められるインフラ刷新

周知のとおり、ITの変化は目まぐるしく、そのスピードは増すばかりだ。ヴィーニャ氏は変化のスピードについていくために、「稼働するシステムを止めることなくデータを分離してくれる仕組みを持つ形でITインフラを刷新する必要がある」と指摘した。

「ビジネスデータレイヤーを導入することでデータを迅速に提供可能になる。これも企業として重要な要件」(ヴィーニャ氏)

さらに、企業は新しい仕事の仕方、新しいアプリの開発に取り組んでいるため、データ提供のスピードアップが求められているという。そこで、ワークロードの性質によって異なるエンジンが必要になるが、「Denodo Platformはワークロードとデータエンジンを適切にマッピングできる」と、ヴィーニャ氏は述べた。

ガバナンスとセキュリティの確保

企業ではあらゆる従業員がデータを利用できることが求められているが、かといって、誰もがすべてのデータにアクセスできるようでは困る。なぜなら、従業員によってアクセスしてよいデータが異なるからだ。

そこで、Denodo Platformはユーザーがデータを利用する際、セキュリティと法規制に基づいてデータが利用されていることを保証する。これにより、適切なユーザーが適切なデータを利用することを実現する。

データの民主化

最近、ITの世界で耳にする言葉の一つに「データの民主化」がある。データの民主化の定義は決まってないが、広くは誰もがデータを使える状況を指す。

ヴィーニャ氏は「他のベンダーもデータの民主化という言葉を使っているが、深い意味で使えているのは当社だけ」という。それは、Denodoはデータ消費におけるパーソナル化を実現できるからだ。

「パーソナル化とは、特定のオーディエンスに対し、データをカスタマイズして提供できるようにするという考え方。われわれは論理的データレイヤーとセマンティックレイヤーのデータに対し、意味を高めていくような処理ができる」(ヴィーニャ氏)

なお、Denodoのハイパーパーソナライゼーションはセルフサービスで可能だ。「Denodoでは生成AIで企業が持っているデータを処理が可能であり、自然言語を使ってデータを意味を持っているものにする」とヴィーニャ氏は話した。

収益源の創出、コスト削減、セキュリティ向上を実現

また、ヴィーニャ氏は以下の7つのアドバンテージによって、「新しい収益源の創出」「ITインフラコストの削減」「コンプライアンスとセキュリティの向上」を実現できると述べた。

  • データをすべてセマンティック統合できる
  • データを速く提供できるので、AIアプを迅速に開発できる
  • 企業全体でガバナンスを効かせられる
  • データをカスタマイズして提供できる
  • AIモデルの強化
  • データのレプリケーションの頻度低減によるワークロードの最適化  クラウドにかかるコストにも影響を与える
  • データインフラストラクチャのモダナイゼーション

論理データモデルを持つことで、物理システムと分けてデータモデルを持つことが可能になり、データインフラストラクチャのモダナイゼーションを実現できるという。

「われわれはITコスト、中でもクラウドコストを削減できる。例えば、レプリケーションを減らすことで、コストを減らす。論理レイヤーでガバナンスを持たせることでセキュリティを確保する」(ヴィーニャ氏)

「データ管理のためのAI」「AIのためのデータ管理」を提供

Denodoは「データ管理のためのAI」「AIのためのデータ管理」の双方を提供している。

前者を実現するのはAIアシスタント「Denodo Assistant」だ。同製品は、Denodoが開発した内部アルゴリズムにより主要なLLMと統合することで、ユーザーの質問に回答し、提案を提供する形で、データ製品のライフサイクル全体を通じて開発者とユーザーを支援する。

ヴィーニャ氏は「Denodo Assistant」について、「LLMを使ったチャットボットはこれまでになかった。ビジネスユーザーが自然言語で分析することを可能にする」と説明した。

「Denodo Assistant」はガバナンスを効かせた形でLLMにデータを渡せるので、企業システムを含めた複数のシステムのデータを集計して、ビジネスユーザーに対して具体的な回答を提供できるという。

「Denodoが複数のシステムからデータを取得して、検索結果を返す。Denodoはデータのメタデータを持っており、ベクトル化しているからできること」(ヴィーニャ氏)

後者については、データファウンデーションの提供により、生成AI導入の課題解決を支援する。生成AIを活用したアプリにおいては、必要なデータが複数のシステムに散在しているため、対話のプロセスが複雑という課題がある。

この課題を解決するため、Denodoは生成AIアプリに対して、「すべてのデータに単一のアクセスポイント」「きめ細かなアクセス制御」「リアルタイムで最新のデータアクセス」を提供する。

開発者の生成AI導入を簡素化するソリューションとして、使いやすいSDKにプロセスをカプセル化した「Denodo AI SDK」の提供も始まった。同ソリューションの主要なコンポーネントは「REST API」と「Sample Chatbot App」。

「REST API」は自然言語でのメタデータとデータクエリ機能を提供し、一般的な生成AIパターンを簡素化する構築済みのオーケストレーションを実現する。「Sample Chatbot App」はチャットボットを稼働できるアプリで、オープンソースとして利用できる。

ヴィーニャ氏は「Denodo AI SDK」について、「よい結果が出ている。ビジネス側に高いレベルでデータを提供でき、ハルシネーションも抑えられる」と語った。

Denodoは生成AIのアクセラレーションプログラムを実施しており、日本の企業も参加しているとのことだ。