沖縄県那覇市とNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は3月3日、「特化型生成AIの共同実証による未来協創連携協定」を締結したことを発表した。両社は協力して自治体領域に特化した生成AIモデルの共同実証を進める。

共同実証は「市民サービスの向上」「行政事務の効率化」「生成AI利活用に関する人材育成の支援」を3つの軸として取り組む。AIで担える作業はAIへ、職員は職員でなければならない業務へシフトすることで、持続可能な自治体経営を可能とする未来志向型の協創を目指すとしている。

  • 「特化型生成AIの共同実証による未来協創連携協定」の取り組みイメージ

    「特化型生成AIの共同実証による未来協創連携協定」の取り組みイメージ

共同実証の背景

地方自治体は少子化による急速な人口減少と高齢化の危機に直面しており、総務省の「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告」においても「従来の半分の職員でも自治体として本来担うべき機能が発揮できる仕組みを構築する必要がある」と指摘されている。

那覇市は令和5年に「那覇市DX推進計画」を策定し、「デジタルで変わり続けるまち・那覇」の基本理念のもと、県内自治体に先駆けてテキスト生成AIを導入し、文章のたたき台作成や要約、校正、アイデア出しなどの業務で活用を進めている。

NTT Comは軽量でありながら高い日本語処理性能を持つLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)「tsuzumi」をはじめ、さまざまなモデル活用や、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)、ファインチューニングといった生成AIに関するノウハウを持つ。また、全国47都道府県に支社や支店を持ち、地域創生にも注力する。

ステップ1:庁内業務効率化の推進

まずステップ1では、庁内の共通業務を対象に「特化型生成AIモデル」の実証と評価を実施する。具体的には、那覇市議会議事録を学習したAIによる議会答弁書作成業務のサポートなど、RAGやファインチューニングによる「特化型生成AIモデル」を実証する。

その他、職員向け研修による生成AIの知識の習得や、生成AIの特化型活用におけるノウハウ・ナレッジの蓄積、生成AI活用における効果測定手法の整理、「tsuzumi」を含むさまざまなLLMの評価検証などに取り組む。

ステップ2:適用範囲拡大と高度化

ステップ2では、ステップ1で得られた成果をもとに「特化型生成AIモデル」適用範囲の拡大と高度化を実施する。共通業務または個別業務への「特化型生成AIモデル」の適用範囲の拡大するほか、生成AIの効果的な業務活用アイデアの共同検討やアイデアソンなども実施するという。さらに、閉域ネットワーク内の基幹系業務へ「特化型生成AIモデル」の適用可能性を探る。

ステップ3:市民向け応対業務のデジタル完結

ステップ3では、市民との接点を段階的にデジタル化し、住民サービスをデジタル上で完結する仕組みを構築する。LLMやデジタルヒューマン、対話技術などに「特化型生成AIモデル」を組み合わせ、総合案内やオンライン申請、問い合わせ応答など市民向け応対業務をデジタル上で完結できるかを検証する。

また、今回の実証実験の成功事例を「那覇モデル」とし、他自治体へ共有することによる全国的な波及効果の促進とプロモーションにも着手する予定。AIエージェント、マルチモーダル、デジタルインクルージョンなど、自律的かつ効率的な行政運営の実現にも貢献する。