サーバーワークスは3月3日、新会社として「サーバーワークス・スマートオペレーションズ」を設立した。「新潟に新会社のオフィスを構えるなんて夢にも思っていなかった」--。そう話すのは自身も新潟市出身でもあるサーバーワークス 代表取締役社長の大石良氏だ。サーバーワークスは3月3日、新会社として「サーバーワークス・スマートオペレーションズ」を設立、新潟市内で6月から業務を開始する。

  • 左からサーバーワークス 代表取締役社長 大石良氏、サーバーワークス・スマートオペレーションズ 代表取締役社長 玉木雄二氏

    左からサーバーワークス 代表取締役社長 大石良氏、サーバーワークス・スマートオペレーションズ 代表取締役社長 玉木雄二氏

新潟県庁を表敬訪問

新会社の設立に先立ち、同社では2月12日に新潟県庁を表敬訪問した。出席者は新潟県副知事の笠鳥公一氏、新潟副市長の井崎規之氏、大石氏、新会社の代表取締役社長兼サーバーワークス 執行役員 マネージドサービス部長の玉木雄二氏の4人だ。

笠鳥氏、井崎氏は地元への進出に対して謝意を述べ、大石氏と玉木氏はともに新潟市生まれのため、地元話に花を咲かせていた。

  • 左から新潟県副知事の笠鳥公一氏、大石氏、玉木氏、新潟副市長の井崎規之氏

    左から新潟県副知事の笠鳥公一氏、大石氏、玉木氏、新潟副市長の井崎規之氏

当初、大石氏はコロナ禍の状況において関係者から話を聞いたが、進出することはまったく考えていなかったという。

同氏は「当社は10年以上前からリモートワークを実践していましたが、時として機能分散やコミュニケーションにギャップが生まれていたのも事実です。営業や技術職はリモートワークでも機能するのですが、運用となると問題が発生した際に迅速に動けるように集約する必要性は考えていました。コロナ禍も明けて、改めて話を聞いてみたら条件が思いのほか良かったのです」と話す。

新潟市への進出の意図とは

ここで同氏が言う機能分散とは、同社はAWS(Amazon Web Services)をはじめとしたクラウドサービスの導入から運用までを手がけているが、運用となると定常的なものであれば問題にはならないが、何かしら障害や問題が発生した際に、一部の保守や運用、深夜対応のメンバーは存在するものの、所在地が分散していたという。

そのため、新会社はリアルタイムにトラブルシューティングが行えるように危機管理機能を備えた同社のコントロールセンターとして、各所に分散していた運用面の機能を集約している。

また現在、新潟市ではまちづくりのプロジェクトとして「にいがた2km」を進めており、新潟駅、万代、万代島、古町エリアの市中心部において、新潟圏域の地域経済循環を太くし、市民所得の向上と財源の確保を図りつつ、市民の安心・安全の確保、子育て支援、介護・福祉の充実など住民福祉を向上させていくための戦略的な取り組みとなっている。

サーバーワークスは10年以上リモートワークを実践しているが、新会社は出社を前提とし、サーバーワークスの社員6人が移住する。さらに、新潟市とともに新潟県も積極的に誘致に動いていたことから、進出が決定した。

大石氏は「こうしたプロジェクトのコンセプトと、当社がやろうとしていることがマッチしました。新潟県・市にバックアップしてもらっており、既存の社員も移住もしやすい環境です。東京に比べて不便になったという話はほぼ聞いていませんね」と語っている。

  • 大石氏

    大石氏

新会社を「AIの実験場」に

新会社では、主にAWSの導入支援におけるMSSP(マネージドセキュリティサービス)と、MSP(マネージドサービスプロバイダ)を提供。

  • 新会社の概要

    新会社の概要

  • エントランス

    エントランス

  • 執務エリア

    執務エリア

MSSPではセキュリティシステムの構築・運用、脅威の監視・分析、インシデント発生時の対応、セキュリティに関する情報提供・教育、MSPではITインフラの運用・保守、ソフトウェアのインストール・アップデート、ITに関するコンサルティングをそれぞれ提供する。

従業員数は前述の既存社員6人に加え、地元雇用で9人を採用して6月の業務開始時に15人でスタート。2026年3月までに地元での中途採用で25人に増員し、それ以降は新卒採用も検討している。

新会社のオフィスは、新潟駅から徒歩5分程度のINPEX新潟ビルディング6階だ。入室すると執務スペースと入退出が厳格に管理された、NOC(Network Operation Center)、SOC(Security Operation Center)のエリアを配置し、SOCに関してはPCI DSSの基準に準拠したスペースを用意している。

  • NOCエリア

    NOCエリア

  • SOCエリア

    SOCエリア

  • NOC、SOCエリアは担当者のみ入退出できるようにICカードに加え、監視カメラにより厳格に管理している

    NOC、SOCエリアは担当者のみ入退出できるようにICカードに加え、監視カメラにより厳格に管理している

今後の展開について、大石氏は「AIの実験場」とすることを想定。同氏は「保守や運用は繰り返し業務など定常的なものが多く、特に生成AIの技術は統計ベースの仕組みなのでベストプラクティスが作りやすいと考えています。保守・運用に関しては、AIエージェントや自動化のプロセスが当てやすい領域であり、人間が高品質な運用サービスを提供しつつグループ全体としてAI化、商業化していくことを検討しています」との見解だ。

また、新会社の代表取締役社長に就任した玉木雄二氏は「これまでのキャリアの中で取締役として参画してきましたが、社長となると異なる立ち位置となり、集大成として取り組むことを目標としています」と、意気込みを語る。

  • 玉木氏

    玉木氏

そして、玉木氏は「個人的には運用畑が長かったことから、運用の働き方を180度変えていきたいと考えています。運用の現場は現地に行かなければならない、張り付いていなければならないという視点がありますが、そういうものをひっくり返していきたいです。そういった意味ではAIを使える人材を育成していくことにも注力していきます」と力を込めていた。