日本電信電話(NTT)、東日本電信電話(NTT東日本)、弘前大学医学部附属病院(弘前大学病院)、メディカロイド、鹿島建設は2月28日、物理的に離れた2つの病院間に設置した手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」(以下、hinotori)をIOWN APN(All-Photonics Network)で接続する遠隔手術支援の実証に成功したことを発表した。

実証の目的

今回の実証では遠隔手術支援の応用可能性を確認するため、ネットワークの遅延やゆらぎの影響の僅少化と、遠隔コミュニケーションにおいて切断や遅延なく執刀医および医療従事者が同一手術室にいるような臨場感あるコミュニケーションが可能かを課題とした。

実証の内容

実証においては青森県内にある弘前大学医学部付属病院と、つがる西北五広域連合つがる総合病院を、NTT東日本が提供する「All-Photonics Connect powered by IOWN」で接続。人工臓器モデルを使用して、医師による現実に即した遠隔手術支援の実証を実施した。

具体的には、APNの通信品質の評価に加え、同環境下に接続したメディカロイドの「hinotori」を高精度かつ安定して遠隔操作実現できるかを確認した。さらには、同環境下に接続した鹿島建設の立体音響スピーカー「OPSODIS 1」、バイノーラルマイク、高精細4Kリモートカメラ、大型モニターをAPNと組み合わせて活用して、離れた病院間の手術室にいながらまるで同じ手術室にいるかのような臨場感のある円滑なコミュニケーション環境を実現できるかも検証した。

  • APNを用いた遠隔手術支援の構成イメージ

    APNを用いた遠隔手術支援の構成イメージ

実証成果:高精度な手術支援ロボットの遠隔操作

APN通信において定量的な品質測定を実施した結果、片道の伝送遅延は0.28ミリ秒、遅延ゆらぎは平均0.00マイクロ秒、最大0.02マイクロ秒だった。NTTの従来のギャランティ回線では片道の伝送遅延は2.20ミリ秒、遅延ゆらぎは平均0.17マイクロ秒、最大2.96マイクロ秒であり、APNは従来のギャランティ型回線と比べて約4倍の伝送遅延性能と120倍以上の最大遅延ゆらぎ性能であることが確認された。

実証成果:同一手術室にいるかのようなコミュニケーション

遠隔コミュニケーションの評価においては、術者がコミュニケーション環境を体感。その後、「コミュニケーションの臨場感を感じるか」といったアンケートに回答した。その結果、高い評価が得られたという。

APNによって大容量・低遅延・ゆらぎなしで音声信号および映像信号を伝送し、立体音響スピーカー「OPSODIS 1」、バイノーラルマイク、高精細4Kリモートカメラ、大型モニターを用いた空間を創出。まるで同一の手術室にいるかのような臨場感のあるコミュニケーション環境を実現できることが確認されたとのことだ。

  • 左:現地施設側(弘前大学医学部附属病院)、右:遠隔施設側(つがる総合病院)

    左:現地施設側(弘前大学医学部附属病院)、右:遠隔施設側(つがる総合病院)