国立天文台はすばる望遠鏡を用いて、2032年に地球に衝突する可能性が指摘されていた小惑星「2024 YR4」の撮影に成功したと2月24日に発表した。国立天文台 ハワイ観測所の寺居剛博士らの研究チームによる成果だ。
-
HSC画像から、2024 YR4(緑十字でマーク)を中心に南北1分角、東西2分角の領域を切り出したもの。rバンド(波長550〜700ナノメートル)で120秒間露出で撮影された。観測は、ハワイ現地時間2025年2月20日20時40分〜21時00分に行われ、天候は快晴(0.5秒角のシーイング)
(C)NAOJ
(出所:すばる望遠鏡Webサイト)
地球軌道を横切る小天体は「地球近傍天体」(NEO)と呼ばれ、中でも三次元的に見てもきわめて地球に近い軌道を通るなどの条件を満たしている天体は、「潜在的に危険な小惑星」(PHA)という。PHAは直ちに衝突するわけではないものの、監視を怠るべきではないリスクのある天体だ。人類の天体軌道予測技術は進歩しているが、こうした小天体は、大きな天体の近くを通過する際に軌道を大きく変化させることもあるため、一度の軌道計算で「衝突の心配はない」と判断されたとしても、今後も絶対に衝突しないとは限らない。
近年では、2013年にロシアに落下したチェリャビンスク隕石の被害が記憶に新しい。このときのサイズは15〜20mと見積もられている。そのサイズでも、太陽を公転しているためとてつもない速度であり、地球に衝突した場合、恐ろしい破壊をもたらす“天然の質量爆弾”となることを改めて実感させられる出来事だった。
少し前までは、2029年に小惑星「アポフィス」の衝突が警戒されていた(軌道予測の精度が向上した結果、衝突の危険性はほぼなくなった)。久しぶりに警戒が呼びかけられたのが、2024年12月に発見された小惑星「2024 YR4」だ。
小惑星2024 YR4は直径が40〜90m程度と推定され、長い楕円軌道で約4年の周期で太陽を公転している。公転期間の多くは地球から遠く離れているものの、太陽に近づくときには地球軌道と交差するため、まれに地球に接近する。そのため、国際連合宇宙部が事務局を務める国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)によって、2032年12月にわずかながら地球に衝突する可能性があるとして通知が出されていた。
この通知がきっかけとなり、小惑星2024 YR4の軌道を正確に特定するための観測が世界中で実施されるようになった。IAWNの要請を受けた宇宙航空研究開発機構(JAXA)プラネタリーディフェンスチームからの依頼により、すばる望遠鏡も観測を実施。
そしてハワイ現地時間の2025年2月20日、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam」(HSC)を用いた観測で、小惑星2024 YR4の撮影に成功し、位置を正確に測定することができたという。観測は、可視光スペクトルの赤色領域に相当するrバンド(波長550〜700ナノメートル)にて行われ、その明るさは24.3等級だった(肉眼で観測できる下限とされる6等級の約1777万分の1の明るさ)。
-
HSCで連続撮像された画像を用いて作成された、2024 YR4の移動する様子がわかるGIFアニメーション。15分間に撮影された120秒間露出の画像(30秒角にトリミング)を使用して作成
(C)NAOJ
(出所:すばる望遠鏡Webサイト)
今回の観測を行った寺居博士は、「2024 YR4 は、発見当時は比較的明るく見えたものの、その後地球から遠ざかるのに伴いどんどん暗くなり、2月後半には大型望遠鏡でなければ観測が困難な状況でした。すばる望遠鏡の大きな集光力とHSCの高い撮像性能を生かして、本観測ミッションは達成されました」とコメントしている。
なお今回の観測成果は、国際天文学連合の小惑星センターに即時報告され、小惑星2024 YR4の軌道要素(軌道を表す数値)の精度向上に寄与したとのこと。IAWNによると、改善された軌道要素から求められた2032年の地球への衝突確率は0.004%(2025年2月23日時点)と、2月上旬に発表された確率よりも大幅に低下している。