TISインテックグループのインテックは2月21日、大阪府岸和田市と避難所受付デジタル化の実証実験を2025年1月に実施した結果を発表した。実証では避難所受付の仕組みとして、エリアコミュニティネットが提供する「避難所チェックイン管理システム」を使用。データの可視化と分析はインテックが提供する「エリアデータ利活用サービス」を使用した。

実証の背景と目的

岸和田市は市民の生活利便性の向上や一人一人の生活の豊かさを高めることを目的に、情報技術や先端技術を活用したスマートシティの取り組みを推進している。令和7年3月の「岸和田市スマートシティ推進協議会」の設立に向けて、インテックは先行プロジェクトである「防災に関するワーキング活動」に参画。今回の実証実験では、情報技術や先端技術が災害時の避難所受付における待ち時間短縮や業務の効率化につながるかを検証した。

  • 実証実験の概要図

    実証実験の概要図

避難所受付デジタル化とデータ連携の仕組み

避難所の入退所受付では、避難登録端末(タッチパネルPC+ICカード 兼 QRコードリーダー)にマイナンバーカードをかざすことで、氏名・性別・生年月日・住所の情報が自動でシステムに登録される。マイナンバーカード未所持者に対しては、所定のQRコードを読み取ることでWebアプリから避難者情報を登録できる。

避難所状況の管理において、入退所受付で登録された情報はリアルタイムに更新され、避難所別に避難者リストの作成や避難所の開設・閉設情報、収容人数情報などを確認できる。

データの可視化と分析の段階では、避難者数や避難者属性、避難所別の収容率など個人情報を含まないデータを「避難所チェックイン管理システム」から「エリアデータ利活用サービス」へAPI連携し、BIツールにより一元的に情報を可視化。さらには、「エリアデータ利活用サービス」を介すことで他システムへのデータ連携が可能だ。実証においては「大阪広域データ連携基盤(ORDEN)」へのデータ連携を実施したという。

実証実験の結果

避難所受付時間の効率化について、災害時の避難所開設を想定し、マイナンバーカード、QRコード(スマートフォン使用)、手書きの3種類による受付作業を行い、どの受付方法が簡便かつ短時間での対応が可能かを検証した。

その結果、マイナンバーカードを活用した方法ではQRコードより約91%短縮、手書きより約87%短縮と受付時間を短縮でき、効率性が検証された。なお、スマートフォンを用いたQRコードでの受付は手書きよりも時間がかかることが確認された。スマートフォンの操作やWebアプリの画面遷移に手間取ったことが主な要因で、定期的な操作体験やマニュアルの整備、システム改善の必要性が示されたという。

  • 受付方法の比較

    受付方法の比較

データの可視化について、避難所別、年代別、時間別にBIツールでデータを可視化し避難所運営に効果的かを検証した結果、各避難所の状況(避難者数の推移や収容率、年代・性別など)を地図情報やグラフなどで一元的に可視化され、災害時の情報把握や職員をはじめとする支援者の適正配置や支援物資の適正配置にも役立つことが確認できた。

  • エリアデータ利活用サービスのBIツールで可視化

    エリアデータ利活用サービスのBIツールで可視化

また、「エリアデータ利活用サービス」に蓄積されたデータが「大阪広域データ連携基盤(ORDEN)」へ正しくデータ連携されるか技術的な検証を実施したところ、「大阪広域データ連携基盤(ORDEN)」へ正しくデータ連携がされ、公民が活用できるデータカタログサイトへ掲載されたことが確認できたとのことだ。