スウェーデンに拠点を置くエンタープライズソフトウェア企業のIFSは2月19日、統合基幹業務システム(ERP)や設備資産管理(EAM)、AI関連サービスなどを手掛ける日本企業の買収を検討していることを発表した。TECH+の個別取材に応じたIFS グループCOO(最高執行責任者)のマイケル・オイッシ氏が明らかにした。
すでに買収に向けて協議している日本企業もいくつかあるという。買収する企業の数や買収する時期に関しては明言せず、「特に目標の数字はなく、逆に制限する数もない」とオイッシ氏は説明した。日本企業を買収することで、日本独自の商習慣を事業に取り込み、日本国内の製造業を中心に基幹システム刷新のニーズに応えていく考えだ。日本国内における市場シェア拡大を目指す。
1983年にスウェーデンの原子力発電所のエンジニアが創業したIFSは、製造、航空宇宙・防衛、エネルギー、サービス産業、建設エンジニアリング、テレコム通信の6業種に特化し、ERPとEAMに加え、フィールドサービス管理(FSM)とサービスライフサイクル管理(SLM)の4領域の製品を1つのプラットフォームで提供している。
米国、北欧、南欧、アジア太平洋・中東の4地域で80カ国以上の市場に参入しており、グローバルにおいて1万社以上の企業が同社のソリューションを導入している。2024年度の業績は、年間経常収益(ARR)が前年同期比前年比32%増の10億ユーロ(約1586億円)を超え、クラウド収益は前年比38%増と2桁成長を続けている。
日本市場には1997年に参入。トヨタ自動車や日鉄スチール、日本航空(JAL)、京セラ、クボタ、OKIなど、日本を代表するさまざまな企業が同社のソリューションを活用している。
また2024年7月には、国内ERPを手掛けるワークスアプリケーションズ(WAP)と、国内向けシステム供給に関して提携したと発表した。高い技術力を持つ日本を、同社の次の“超成長市場"と位置付けている。
同提携では、特に「2層ERP」と「コンポーザブルERP」に焦点を当て、異なる国や地域の業務ニーズに対して、標準機能でシステムを構成し、「完全標準化」と「脱アドオン」の実現を目指す。
2024年10月にはオフィスを東京・渋谷から大手町に移転してさらなる増員を図り、サポートやクラウド、カスタマーサクセスなどの体制整備を急ぐ。
さらにIFSは2月19日、2025年3月1日付けでアジア・中東地域担当プレジデントに北中欧地域担当 COOのハンネス・リーベ氏が就任することも明らかにした。現アジア・中東地域担当プレジデントのヴィンセント・カルバーリョ氏は同日付で、Go-to-Market戦略総括プレジデントに就任し、企業の買収など今後の成長戦略を担当する。
リーベ氏はIFSに入社する以前、フィンテック企業大手の英FinastraにてグローバルGo-to-Market(GTM)最高執行責任者(COO)を務めていた。Finastra入社以前は、ソフトウェア開発大手の独SAPに17年間在籍し、新興市場COO、中東・北アフリカ地域の共同マネージングディレクター、S/4HANAヨーロッパ統括マネージャーなど、複数の上級管理職を歴任してきた。
19日に個別取材に応じたリーベ氏は、「IFSのビジネスは、数十年前に、顧客の敷地内にテントを設営し、ソリューション開発にあたるところから始まった。この企業DNAは今のIFSにも受け継がれている。これからも業種と顧客に焦点を当て続け、業界固有の課題解決に取り組んでいく。2025年度は売上げを倍にしたい」と意気込みを見せた。