苦境のヤマトHDが富士通と提携 異業種の仲間づくりを強化

「課題をいかにビジネス化させていくか。それが当社の新規領域となる」ー。ヤマトホールディングス(HD)社長の長尾裕氏は語る。同社は富士通と複数の荷主の荷物を混載する共同輸配送の仲介支援を始める。

 物流業界では依然としてドライバー不足の懸念が払拭できていない。その解決に向けてヤマトHDが試みるのが、少ない人手で効率良く配送するための"仲間づくり"。その共同輸送システムの開発は富士通が担う。

「運送会社が手を組むだけでなく、荷主の意識が変わらないと解決は難しい」(トラック会社幹部)という声が多い。代表的なものが荷主ごとに仕様が異なる出荷計画や荷物量などのデータだ。新サービス「SST便」はヤマトHD子会社(サステイナブル・シェアード・トランスポート(SST))が手掛ける。仕様の異なる各社のデータを標準化し、出荷情報や物流事業者の運行予定をベースにして最適な輸配送計画を作成する。

 SST便は宮城県から福岡県の間で1日16便運行。標準パレットのスペース単位で利用でき、定時運行・中継輸送・混載による幹線輸送を提供する。一般的にトラックの積載効率は約40%。「片道は空」(物流会社関係者)という状況がドライバー不足に拍車をかけている。

「今後は人工知能(AI)を使い、最適な輸送手段の組み合わせや効率的な倉庫スペースの活用が実現できる」(富士通社長の時田隆仁氏)。もともと約170万社の法人顧客と3500社以上の物流事業者とのネットワークを持つヤマトHDが参加を呼び掛けていく考えだ。

 仲間づくりを進めていかなければならない一方、ヤマトHDは日本郵便との協業を巡って提訴に発展。効率化を期待して日本郵便に小型荷物の配達を委託したことで「荷物が届くまでのリードタイムが延びている」としているが、日本郵便は反発。

 当初、ヤマトHDは宅急便の配送網では効率が悪かったA4サイズ程度のカタログなどを運ぶ「クロネコDM便」と小型薄型荷物「ネコポス」は日本郵便のネットワークを活用した方が良いとの判断だった。しかし、それが想定通りに進んでいない。

 ある物流会社の首脳は分析する。「通常なら5%の運賃の値上げが平均的なところ、10%以上の値上げを実施して客離れが起こった。それに焦ったところから同社の混乱が始まっている」

 物流業界では30年度には輸送の能力が約34%不足する可能性があると言われている中、いかに全体最適の視点で解決策を見出せるか。宅配大手・ヤマトHDの力量が問われる局面だ。

数量を追ってすれ違い 日本郵便がヤマトを提訴