
「今後も物価の見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げていく基本的な考えは変わらない」ーこう話すのは日本銀行総裁の植田和男氏。
2025年1月24日、日本銀行は金融政策決定会合で政策金利を0.25%から0.5%に引き上げた。この0.5%は日本にとって17年ぶりとなる金利水準。
それまで日銀が発信してきた内容から当初、利上げは24年12月が見込まれていたが、米国のドナルド・トランプ大統領の就任が1月20日となっていたこともあり、その政策や就任後の市場への影響を見極める必要もあり、1月にスライドした形。
総裁の植田氏、副総裁の氷見野良三氏は1月の会合前、講演などを通じて利上げの実施を市場に織り込みにかかった。
それは24年7月31日の利上げ時、これがサプライズと受け止められたことに、米国の景気後退懸念などが重なり、日経平均が8月5日に4400円を超える過去最大の下落を記録したから。日銀の「市場との対話」がうまくいかなかったとの評価が強かったためだ。今回は利上げでも、トランプ政権発足でも市場に大きな波乱はなかった。
市場の関心は、すでに次の利上げタイミングに移っている。有力視されているのは25年7月末。同月には参議院議員選挙が行われるが、その選挙戦を終えてから利上げという形になる可能性が高いと見られる。次の0.75%というのは実に30年ぶりの水準となる。
だが、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は今後について「トランプ次第だと思う」と指摘する。就任直後、不法移民問題で対立したコロンビアへの高関税を打ち出し、合意すると即撤回したが「常識から外れている」(熊野氏)。2月1日にはカナダ、メキシコ、中国に高関税を課す大統領令に署名。この不確定要素が市場の行方を左右する。
個人は住宅ローン負担、企業は利払い費の増加など、国民生活への影響が強まる。さらに、長期金利が上昇すれば国債の暴落懸念なども出る中、「金利のある世界」への回帰が進む。