将来宇宙輸送システムは、同社独自の研究・開発プラットフォーム「P4SD」における制御系設計・開発検証プラットフォーム構築をめざし、クアッドコプタ型ドローンを使った誘導制御・飛行試験を福島県で実施。P4SDの制御系設計機能の改良に向けたデータ取得に成功したと2月12日に発表した。

  • 誘導制御・飛行試験に用いたクアッドコプタ型ドローン

  • シミュレーションと実際の取得数値の差異の確認画面

ロケット開発の短期化に向け、同社がアジャイル型の開発手法を活用して構築したP4SD(Platform for Space Development)を最大限活用するにあたり、実際のハードウェアをシミュレーション環境に組み込んでテストを行う検証手法(HILS:Hardware In the Loop Simulation)の機能実装が欠かせない。

  • 独自の研究・開発プラットフォーム「P4SD」の構成

HILS環境構築の第一段として、開発担当者(シミュレーター・制御設計者)と運用担当者(フライト試験者・計測者)が密接に連携し、ソフトウェアの開発から市場投入までのプロセスを効率化することを目的とするDevOps(デブオプス)フローの実施を目的とし、同社では「福島ロボットテストフィールド」(福島・南相馬市)で、ドローンの誘導制御・飛行試験を1月20日〜23日にかけて実施した。

  • 誘導制御・飛行試験の様子

今回の誘導制御・飛行試験の結果、シミュレーターからフライトソフトウェアを書き込み、即座にフライトして計測することで(DevOpsの実施)、誘導制御の設計を瞬時に見直すことに成功したという。使用機体は、クアッドコプタ型のドローン「Parrot Mambo」で、開発環境はMATLAB/Simulink。具体的な成果は以下の通り。

  1. モーションキャプチャを用いて、飛行中の機体の位置・姿勢計測を行い、今後の航法設計に優位なデータを取得
  2. PID制御による誘導、およびMPCによる誘導の特性を比較するデータの取得
  3. 設計した航法・誘導・制御が風外乱によってどのような挙動を行うかを評価(風速3ml/s以下で安定飛行)

今回の試験にあたり、P4SDにおける制御系設計機能の改良に向けて、制御系開発をベースにフライトテストプラットフォームを改良。DevOpsの一連のフローを実施してきた。あわせて、ベースのプラットフォームを構築後に誘導則を大幅に変更した場合にも、短期間(約2週間)で開発を完了させられることを実証できたとしている。

今回の一連の検証フローを経て得られた有用性の確認を踏まえ、同社では新しい機体を用いて、さらにロケットの誘導制御・設計プラットフォームの改良に有用な知見を収集するための試験を2025年夏に行う予定。新たに開発する機体は、ロケットの制御機構に近い機構を備えたドローンとなり、HILSを行って物理層のシステム同定などを測定・検証。より一層P4SDのフライトテストPFを拡張することで、アジャイル型開発のための基盤構築を進めるとしている。