Great Place To Work Institute Japanは2月12日、2025年版 日本における「働きがいのある会社」ランキングベスト100の記者発表会を開催した。発表会にはGreat Place To Work Institute Japanの荒川陽子氏が登壇した。

荒川氏は最新版「働きがいのある会社」ランキングベスト100に加えて、直近の人事領域のホットトピックスである「静かな退職」に関する最新の調査結果の発表を行った。

  • Great Place To Work Institute Japanの荒川陽子氏

    Great Place To Work Institute Japanの荒川陽子氏

「働きがいのある会社」ランキングベスト100

Great Place To Work Institute Japanは、働きがいのある会社づくりの世界的な専門機関で、グローバルで長年蓄積された研究データに基づくエンゲージメントサーベイを行うことにより、第三者機関として「働きがいのある会社」を認定している。

同社では、「働きがいのある会社」について、「立場、仕事、働く場所に関係なく、あらゆる従業員が会社やリーダーを信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社」と定義付けている。

  • 全員型「働きがいのある会社」モデル

    全員型「働きがいのある会社」モデル

今回発表されたランキングは、2023年7月~2024年9月までの期間に657社を対象に、職場について感じている働く人の声を調査した「Trust Index Survey」と経営方針、人事制度、企業風土づくりの施策などを調査した「Culture Audit」をもとに、働く人の声と会社の施策の両面を鑑みて決定されたもの。

今回、大規模部門(1000人以上)では「DHL Express」、中規模部門(100~999人)では「アチーブメント」、小規模部門(25~99人)では「あつまる」が1位に輝いた。

  • 2025年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100

    2025年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100

特に大規模部門で1位に輝いたDHL Expressは、「Connecting People,Improving Lives」というスローガンの下、あらゆる人が働きがいを感じられる職場づくりが推進されている企業。福利厚生への満足度も高く、従業員同士が祝い合う機会も充実されていることが特に評価されての受賞となった。

2025年版調査の全体傾向としては、スコアの変化は小さい企業が最も多いものの、低下より改善した割合が多いという点がポイントとなっている。

また最も改善した設問は「働きに見合った報酬が支払われている」の項目で、それに加えて、世界的に見て日本企業のスコアが低い「仕事に行くことを楽しみにしている」が改善傾向となった。

「静かな退職」の調査結果

発表会の後半では、直近の人事領域のホットトピックスである「静かな退職(Quiet Quitting)」についての調査結果が発表された。

静かな退職とは、現在の勤め先に対する継続勤務意向はありながらも、仕事に対して意欲や熱意を持たず、必要最低限の業務だけをこなしながら働く状態のこと。労働人口の減少や働き方改革に伴い、生産性向上への意識が高まっている中、その逆風となりえる静かな退職という働き方が注目を集めつつある。

同社では、静かな退職が従業員個人に与える影響はもちろん、会社に与える影響も大きいと考えており、中核人材の不足や生産性の低下、競争力を失うことになりうることも踏まえて、今後実践者が増えた場合に、「働きがい」にはどのような影響を与えるのかを調査したという。

今回の調査は、「『静かな退職』実施者および『静かな退職』という言葉を知っている経営・役員・部下を持つ管理職を抽出する」ことと、「『静かな退職』実施者の実態および上司層から見た『静かな退職』の影響を調査する」ことを目的として、2024年12月23日~26日の期間に全国20~59歳の男女を対象に行われた。

今回の調査において「静かな退職の実践者」は、回答者8310人中233人と2.8%の人が「静かな退職を実践している」という結果となった。回答者の年齢構成比を2024年の調査(回答者数6636人)とそろえて集計すると実践者の割合は微増している。

  • 「静かな退職」実践者割合の推移と「静かな退職」実践者 年代別割合

    「静かな退職」実践者割合の推移と「静かな退職」実践者 年代別割合

また、「『静かな退職』という言葉を知っていますか」という質問を通して明らかになった静かな退職の認知度は28.5%。20代は比較的、静かな退職を知っている人が多いことが分かった。

一方で、部下を持つ管理職や一般従業員に比べて経営・役員間の認知度が相対的に低いことが分かった。現場の従業員や管理職には静かな退職の認識が進む中で、経営・役員の認識が追い付いていない様子が伺える。

静かな退職の実践者への上司層の対応について聞いた設問では、静かな退職実践者のマネジメントに、仕事への意欲や熱意を持つ部下と同等かそれ以上の時間をかけると回答した管理職が77.9%に上った。

管理職は、静かな退職という働き方を知ってなお、公平にマネジメントしようと努める傾向があるため、同社は、経営・役員が管理職にかかる負担や悩みを理解するには、静かな退職という現象を知っておく必要があると分析している。

  • 「静かな退職」を実践している部下と仕事への意欲や熱意を持つ部下がいた場合、上司として対応は変わりますか。

    「静かな退職」を実践している部下と仕事への意欲や熱意を持つ部下がいた場合、上司として対応は変わりますか。

荒川氏は「静かな退職実践者と上司層の間には、仕事をする上で職場における連帯感に対して、一人ひとりが与える影響についての価値観や考えの違いがあり、マネジメントの難易度が高い。また、中間管理職の権限では解決できない異動配置や評価基準の問題もある。対処を現場任せにすると中間管理職の負荷ばかりが積み上がる危険性がある」と指摘した。