
吉田氏は会長職に専念
"既定路線"で成長を加速できるのか――。
ソニーグループは社長の十時裕樹氏(60)が4月1日付で最高経営責任者(CEO)を兼務する人事を決めた。会長兼CEOの吉田憲一郎氏(65)は代表権のある会長職に専念。取締役会議長の畑中好彦氏は「新経営チームを全面的に支援していく」とコメントした。
CEOの交代は7年ぶりとなるが、ゲームや映画、アニメといったエンターテインメントを注力分野と位置付ける方針は従来と変わらない。吉田氏は18年から社長兼CEOを務め、家電が中心だった事業を多角化して、コンテンツや知的財産(IP)を重視する経営へのシフトを加速。2024年4ー9月期連結決算(国際会計基準)の売上高は5兆9172億円と、上期では過去最高を記録した。
こうした吉田氏のかじ取りを財務面などから支えてきた十時氏がCEOに昇格するのは順当と言える。
吉田氏は十時氏を「経営チームの要として、グループの成長戦略をリードしてくれた。今後の成長に向けたビジョンや戦略を示すことのできるリーダー」と持ち上げる。十時氏は「平井(一夫・元CEO)、吉田がCEOとして大いに価値を高めてきたソニーを受け継ぎ、より良いソニーを次世代につなぐために全力を尽くす」と意気込む。
ただ、自前でのコンテンツ拡充には限界があり、ソニーGの成長はM&A(合併・買収)の巧拙に左右される。市場ではソニーGが出資してきたKADOKAWAの買収に踏み切るとの観測が出ていたものの、結局は1月に約500億円で株式を追加取得して筆頭株主となるにとどまった。
KADOKAWAは24年に大規模なサイバー攻撃を受け、動画サイト『ニコニコ動画』が約2カ月停止する事態となった。「態勢立て直しが必要な状況。買収を強行しなかったのは英断だ」(業界関係者)との評価がある一方、業容拡大のスピードが損なわれたとの見方もある。
25年は任天堂が新型ゲーム機『ニンテンドースイッチ2』を投入予定で、ライバルの攻勢も激しい。ソニーGは新体制の真価が早々に試される。