第2次トランプ政権が1月20日から動き出した。間違いなく世界はトランプ氏に振り回されることになるだろう。
トランプ氏が進める関税引き上げなどの政策は、米国経済を良くするのか、悪くするのか。今のところ成長を押し下げ、インフレを招くといったネガティブな見方が大勢であるが、トランプ氏の行動は予見し難く、事態が判明する都度、それを予測に織り込んでいくしかない。
最近よく議論になるのは、米国主導のこのドタバタ劇は、トランプ政権の任期4年を我慢すれば収まるのかという点だ。
米国が関税引き上げなどに動けば、企業の立地戦略には大きな影響が出る。例えば、トランプ氏が目下、目の敵にしているメキシコの工場をどうすればよいのか。相当な決断が要る。
仮に、4年辛抱すれば収まるなら、メキシコの工場をそのままにして、世界にある他の工場の稼働率を調整し、米国国内の割合を高めるなどの方法が取れるかもしれない。しかし、4年で済まないとしたら、その方法は取れなくなる。工場の存廃を含め、次の工場の立地決定は大きく変わってくるだろう。
米国では以前から政治や経済の2極化が指摘されている。今回副大統領に就くバンス氏は、4年後に大統領候補となり、当選して2期8年を務めれば、12年間ホワイトハウスの中枢に座ることになる。バンス氏は、関税引き上げやドル切り下げといった保護主義的な政策を支持し、トランプ氏以上に自国第一主義を貫く可能性が高い。
民主党の政権に替わっても、内向き化した流れを止められると、楽観的に予想することも難しい。何とかして欲しいとは思うが、冷静に世界を眺めれば、数十年続いてきたグローバル化は減速し、自国第一主義や分断世界に振り子が振れている。
英国、ドイツ、フランスなどでは、ここ数年トップ交代が相次いでいる。格差や物価高への怒りが政権批判につながり、選挙での大敗によって、現政権が窮地に追い込まれている。
世界では中道的な政党が支持を失い、急進的な政策を掲げる極左や極右が支持を集める。国内の分断は深まるばかりである。
日本も30年ぶりに自公が少数与党となった。政治と金の問題も大きいが、格差や物価高への不満もあったと思われる。わが日本は、どうしていくべきか。
差し迫った課題としては、来年以降に本格化する日米交渉が重要になる。日本の直接投資は第1位、雇用創出数も英国に次ぐ第2位と貢献している。米中対立が深まる中、安全保障面でも日本の重要性は増している。それほど酷い交渉にはならないだろう。
ただ、資源や市場規模が限られる日本は国際化を捨てきれない。グローバル化の先導役として如何に振舞うか。日本の課題は大きい。