
建物内の水を全て賄う「ゼロウォータービル」の開発
─ 2025年の建設市場について大成建設社長の相川善郎さんの展望を聞かせてください。
相川 土木は政府の防災・減災、国土強靭化対策等に牽引された底堅い公共投資等により、25年以降も安定した需要が続くと思います。建築は半導体関連や製薬関連などの生産施設や物流関連の施設やデータセンターの需要も引き続き堅調です。
ただ、建設資材価格の高止まりから、首都圏の再開発や大型オフィスビルなどでは工事の需要はあっても、イニシャルコストが高くて工事が途中で止まったり、延期といった案件も出てきているのが、少し心配です。
─ 中長期の視点では50年の脱炭素社会の実現へ「ゼロカーボンビル」や「ゼロウォータービル」に関する研究開発にも熱心に取り組んでいますね。
相川 ええ。当社は環境系の技術についてはフロントランナーです。年間エネルギー収支がゼロになる「ゼロエネルギービル」は当社が日本で初めて開発しています。次は建築資材の調達から解体までの間、建築ライフサイクル全体でCO2をゼロ以下にする「ゼロカーボンビル」を開発していきます。25年度中には完成させて環境系技術実証実験をしたいと考えています。
また、建物に上水を使わず、雨水・再利用水だけで建物内の水を全て賄う「ゼロウォータービル」の開発も進めています。年初の能登半島地震や豪雨のときは水道の復旧が一番遅れていたので、こういったビルも今後必要になってくると思います。
─ 建設業界の担い手不足にはどう対処していきますか。
相川 人口減に伴う就業者の減少は、他の産業同様、建設業も非常に深刻です。中でも技能労働者、いわゆる職人さんの高齢化が他産業よりも著しいことから、業界をあげた担い手確保対策を講じています。その対策は大きく2つあります。1つ目は年収を上げること、2つ目は休日・休暇をしっかり4週8休(4週間の間に休みが8日あること)取ってもらうことです。
建設業生産労働者(建設技能者に相当)と全産業労働者の年収を比較すると、大分縮まったものの依然として80万円近くの差があるのが現状です。全産業レベルに近づけていくためには、毎年5~10%ほど職人さんの労務費を上げていかないといけません。目標に向け業界全体で進めています。当然ながら私どもも適正な請負金での発注者との契約が原点としてあります。
休日・休暇も、職人さんにしっかり取得してもらうためにも、私どもが発注者と適正な工期(工事現場の4週8閉所も目指す)での契約をお願いしていかなければなりません。休日・休暇をしっかり取れるような建物の建設工事期間をいただくことが非常に重要だと思っています。