日立製作所(日立)が1月31日に発表した2025年3月期第3四半期(10~12月)の連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前年同期比14%増の2兆4652億円だった。同社の中核事業である「IT(デジタルシステム&サービス:DSS)」と「環境(グリーンエナジー&モビリティ(GEM))」が好調だった。
一方、自動車部品の日立Astemoの持ち分法投資損益の悪化が業績に響き、純利益は41%減の1385億円となった。
同日の決算発表会に登壇した執行役専務 CFO(最高財務責任者)の加藤知巳氏は「生可能エネルギー関連案件や送電網設備の更新案件が好調だった。DXやモダナイゼーションの追い風を受ける国内IT事業も伸びた」と説明した。
送配電事業が好調、生成AIブームが追い風に
生成AIの普及などに伴う電力需要の拡大を受け、電気を効率的に分配する送配電事業が伸びている。米テック大手などによるAI投資の恩恵を継続して受けている。大量に電力を消費するAI用データセンターの建設ラッシュや、再生可能エネルギー発電の増加などを受け、世界的に送配電網の整備が進んでいる。
第3四半期における送配電子会社の日立エナジーの売上収益は26%増の6099億円だった。受注残からの売上転換により増収を達成。売上規模も増え、着実なプロジェクトの実行、継続的な生産効率向上および受注残のクオリティ(リスク・収益性)改善の影響により増益につながったとしている。
同社は2020年にスイス重電大手ABBから買収した送配電網部門が前身。欧米を中心に120カ所以上の生産拠点を持つ。2027年までに送配電機器の増産に45億ドル(約7000億円)を投資すると発表しており、北米や欧州、インドなどの工場に投資し、送配電機器を増産する方針だ。
売上収益を9兆7000億円に上方修正
DX(デジタルトランスフォーメーション)支援事業「Lumada(ルマーダ)」も好調だった。同期間における売上収益は30%増の7400億円だった。クラウドやセキュリティ関連の事業が伸びた。
日立は生成AIのユースケース1000件以上のノウハウ、OTナレッジを活用した業務特化型LLMを提供開始。金融や製造、交通など専門性の高い業務分野への適用を加速させている。また、同社が1兆円を投じた米IT大手のGlobalLogicが最先端のセキュリティ監視センター(SOC)をポーランドに開設した。
日立の2025年3月期通期の見通しについては、売上収益は前期比で微減の9兆7000億円、調整後営業利益が23%増の9300億円、純利益は3%増の6100億円と、従来予想からそれぞれ、5500億円、550億円、100億円引き上げた。
4月から徳永副社長が社長に昇格「真のOne日立」実現へ
日立は12月16日、徳永俊昭副社長が2025年4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。徳永氏はCEO(最高経営責任者)を兼任し、小島啓二社長は副会長に就き、東原敏昭会長は留任する。同日記者会見した徳永氏は、「28万人の社員とともに社会に新たな価値を届ける。経営のバトンをしっかりと受け取り、持続的な成長を実現していく」と述べた。
また同社は1月31日、徳永氏のもと4月1日付で事業体制を強化すると発表。デジタルをコアに“真のOne日立”を実現し、社会イノベーション事業のグローバルリーダーを目指す取り組みを加速していく。また、生成AIの活用によりLumada事業を進化させ、業種や地域の壁を超えた成長につなげる考えだ。
具体的に徳永氏は「Lumadaを進化させること、グローバル各地域において成長機会の探索を強化すること、そしてOne日立で新規事業を創設する取り組みを加速することで、グループの持続的な成長を実現していく」と決意を語っていた。