日本オラクルは、2025年の事業方針について説明した。同社 取締役 執行役社長の三澤智光氏は「2025年は『日本のためのクラウド提供』が、いよいよ本格化する1年になる」としたほか、「ビジネスアプリケーションにAIを組み込み、エージェント化することで、エンタープライズAIに大きな変化を及ぼすことになる」とコメント。また、新たにジャパンオペレーションセンター(仮称)を国内に設置し、「Oracle Alloy」や「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer(DRCC)」といった専用クラウドの付加価値向上を目指す考えも示した。
事業方針は「日本のためのクラウド提供」と「お客さまのためのAI推進」
2024年6月からスタートした同社の2025年度における事業方針は、前年度に引き続き「日本のためのクラウド提供」と「お客さまのためのAI推進」の2点を掲げているが、三澤氏は「この取り組みは、道半ばである。達成感を得るところにまで至っていない」と現状を総括しながらも「着実に成果を生み出している手応えがある」と語った。
1つ目の「日本のためのクラウド提供」では「少しずつ具現化してきている」とし、包括的なクラウドインフラストラクチャプラットフォームである「Oracle Alloy」において、野村総合研究所(NRI)が世界で最初に採用し、稼働を開始したことに加え、富士通が2025年4月から稼働させること、NTTデータへの導入が決定していることに言及した。
Oracle Alloyは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)のテクノロジーを活用し、専用クラウドを構築するというもの。金融機関や通信事業者などの組織が、クラウドプロバイダーとなり、自社の顧客に対して、クラウドサービスを提供できるソリューションだ。
付加価値の高いサービスやアプリケーションをパッケージ化し、それぞれの市場や業界特有のニーズに対応できることを特徴としている。また、自社のデータセンターでOracle Alloyを独立して使用することで、特定の規制要件に対応したオペレーションを、完全にコントロールしたクラウド導入も可能になる。
三澤氏は「一般的なパブリッククラウドの場合は、サービスの提供やデータ主権、オペレーション主権を、米国企業が持つことになる。それに対して、Oracle Alloyは、お客さま専用のクラウドとして提供できる点が異なる。専用クラウドの仕組みを、パートナー企業に提供し、価値を付加したサービスが可能になる。いわば、日本のお客様専用のクラウドを実現でき、日本の企業から提供されるサービスが利用できるようになる。物理的にも、論理的にも、データ主権やオペレーション主権が、日本の企業に保証される唯一のクラウドサービスとなる。日本オラクルが目指している『日本のためのクラウド提供』が、いよいよ具現化できる段階に入ってきた」と述べた。
日本のためのクラウド提供を加速させるジャパンオペレーションセンター
三澤氏が「2025年は『日本のためのクラウド提供』が、いよいよ本格化する1年になる」と断言する理由もそこにある。「日本のためのクラウド提供」をさらに加速するために、日本オラクルでは、ジャパンオペレーションセンターを設置することも明らかにした。
これは、2024年4月に米オラクルのサフラ・キャッツCEOが発表した、日本のデータセンターに対する10年間で80億ドル(約1兆2000億円)以上の投資計画のなかに含まれているもので、この戦略的投資の具体的な第一歩ともいえる。
ジャパンオペレーションセンターは日本国内に設置し、24時間365日の体制で「Oracle Alloy」や「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer(DRCC)」といった専用クラウドのオペレーションをサポートし、日本の顧客に対する付加価値提供を後方支援する。
ソブリンクラウドの展開で先行している英国では、同様の機能を持たせた組織をすでに稼働させており、これをひな型にしながら、NRIや富士通などの主要パートナーの意見を取り入れて、日本独自のサポート体制を敷くことになる。
三澤氏は「専用クラウドによるオペレーションを、日本国内に閉じた形で行える体制を整える。これを推進できる会社は日本オラクル以外にはない。Oracle AlloyやDRCCに、さらに付加価値を提供し、より日本のお客様のためのクラウドを提供することができる。そのために、大きな投資をしていくことになる」と、ジャパンオペレーションセンターの役割を説明した。段階的に増員していく計画もあるという。
日本オラクルでは、OCI Dedicated Regionの新たな構成として「Dedicated Region25」を、2025年から提供開始する予定であり、3ラックからという小規模導入を可能するとともに、柔軟な拡張性を持たせながら、数週間での迅速な導入ができる点に高い評価が集まっているとのことだ。
最小3ラックで、自社データセンターに専用リージョンを設置できるともいえ、パブリッククラウドの俊敏性や経済性、拡張性を生かした活用が可能になる。今後、日本におけるDedicated Region25の採用が見込まれるなかで、ジャパンオペレーションセンターでは、こうした動きも視野に入れた体制構築を進めることになりそうだ。
お客さまのためのAI推進を大きく展開できると断言する理由とは?
もう1つの方針である「お客さまのためのAI推進」についても「2025年は、日本で大きく展開を進めることができる」と断言する。
すでに、NRIが2025年度上期に「NRI 金融AIプラットフォーム」を稼働させることを発表。CohereのLLM(大規模言語モデル)を採用し、NRIが持つ金融ビジネスの知見に加えて、金融機関向けに提供しているITソリューション内のデータなどを活用。Oracle Alloyを活用して、顧客ごとの専用環境を構築し、LLMなどのAIによるデータ処理をデータセンター内で完結させることで、データ主権を確保したAI環境を提供することになる。
また、ガバメントクラウドではRKKCSが同社の「総合行政システム」を導入している地方自治体向けに、「Oracle Cloud Infrastructure Generative AI」サービスを利用したAIマニュアルシステムを開発し、2025年4月から提供を開始することを発表している。
三澤氏は「エンタープライズで利用するAIを、お客様に活用してもらう場合に、データがあり、明確なビジネスプロセスがあれば、どこにAIを活用するのか、どうAIエージェントを使って、さまざまなステークホルダーを結びつけるのかといったことがデザインしやすいことがわかった。こうした成果が日本でも生まれている」と述べた。
2025年は2つの方針がより具体化する1年に
さらに、2024年末に来日した米オラクル ERPアプリケーション開発担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのRondy Ng氏が「AIによって、アプリケーションの世界は、これから大きく変わる。すごいことが起きる」と語っていたことを引き合いに出した。
三澤氏は「いままでは機械学習の技術を使って、機能を強化させる取り組みを行ってきたが、製品として提供できる精度に高めるまでに、2~3年という期間がかかった。だが、生成AIを活用することで、やりたいと思っていたことが1~2週間で実現できるようになっている。オラクルは、ERPやSCM、HCM、CXのほか、さまざまなインダストリーアプリケーションを持っており、そこに多くのデータを蓄積している。どこにAIを適用し、どことどこを、エージェントでつなぎ、ステークホルダー同士を会話させるかということが大切になるが、その時代において、オラクルは最もいいポジションにある。業務アプリケーションの世界において、エンタープライズで使うAIの姿が見えてきた」と語る。
そのうえで同氏は「この1年は、ビジネスアプリケーションの世界が、AIエージェントによって、大きな変化を及ぼすことになるだろう。クラウドネイティブなオラクルのアプリケーションに、AIが実装され、それが定期的にアップグレードし、AIによって進化しても別途費用がかからずに利用できる仕組みを提供することになる。お客さまがデータを集めて、自分たちでLLMを選択し、独自のAIを作っていくのは大変である。それは限られた顧客にしかできない。ベンダーが提供しているアプリケーションにAIが入り、そのままターンキーで使ってもらえるようにすることが、エンタープライズAIの普及につながる。オラクルはその先頭を走り、お客さまのためのAIを推進していくことになる」と述べた。
三澤社長が語るように具体的な施策を日本で実行することで、2025年は日本オラクルにとって「日本のためのクラウド提供」と「お客様のためのAI推進」という2つの方針を、より具体化する1年にすることができそうだ。

