日本IBMは1月27日、都内で「IBMパートナー・フォーラム2025」を開催した。本稿では、同社 代表取締役社長の山口明夫氏の基調講演を紹介する。
IBMがパートナーと目指す3つの方向性
まず、山口氏は企業を取り巻く環境の変化として「経済要因」「社会・環境要因」「制作・外交的要因」「技術要因」を挙げた。同氏は「デフレからインフレに移行し、金利も上昇しているほか、労働人口の不足、地政学的なリスク、そして生成AIの急速な台頭、セキュリティリスクが存在している。こうした状況下においては、システムを安定稼働させつつ新しいテクノロジーを使わなければなりません。それには1社だけではなく、パートナーとともに取り組む必要があります」と述べた。
こうした中でIBMでは目指す方向性として「AI」「Automation(自動化)」「Hybrid by Design(ハイブリッド・バイ・デザイン)」を示している。
AIは顧客の目標達成や企業価値向上のため、すべてのプロセスにAIを適用させて特化型AIやAIエージェントを加速し、信頼できるAIを構築するという。山口氏は「オープンなAIです。これはLLMのデータモデルを可視化し、利用者が安心して使い、皆が更新していけるものを作り上げることです。また、エージェントやSLM(特化型AI)、これらを管理していくことも重要です」と話す。
自動化については、システム開発・運用や業務プロセスで徹底的に自動化を進め、人材不足に対応するとともに新しい価値の提供にシフトする。同氏は「これだけさまざまなシステムがつながり、データが分散している中で徹底的に自動化をしていくことが必要になります。その点、当社は自動化のソフトウェアとしてTurbonomicやInstana、Apptio、HashiCorpなどを提供しています。これにより、可視化し、生涯設計と業務システムの回復力を実現します」と力を込める。
ハイブリッド・バイ・デザインに関しては、顧客の特性や経営課題を見据えた最適なITインフラを設計し、構築していく。山口氏は「クラウドが出てきてオンプレミスとつなげて、なんとなくハイブリッドになっている状態になっています。お客様の業務・経営のゴールに向けて実現するものを定義し、必要なインフラをデザインしていくべきです。オンプレミス、クラウドそれぞれに使い方があり、適材適所で追及していくことが望ましいです。また、三菱UFJ銀行、IIJが地銀向けに『金融ハイブリッドクラウド・プラットフォーム』を提供開始するなど、プラットフォーム化、そして最新テクノロジーの活用は重要となります」との見解を示した。
IBM製品をパートナーとともに
このような同社の方向性を支えるものが、コンサルティング、自動化のソフトウェア、AI&データプラットフォームの「IBM watsonx」、「OpenShift」といったハイブリッドクラウドを実現するRed Hatの製品群、トランザクション処理、メインフレーム「IBM Z」や「IBM Cloud」、サーバの「Power」、ストレージなどのインフラストラクチャ、半導体をはじめとした基礎テクノロジーとなる。
端的に言えば上流から「コンサルティング」「自動化」「データ」「ハイブリッドクラウド」「トランザクション処理」「インフラストラクチャ」「基礎テクノロジー」をもってして、未来のテクノロジーである「量子コンピュータ」「人間の脳を模したコンピュータ」につなげ、構築していくという。
一方、同社が示す枠組みの中でパートナーの位置づけとしては、SIer、ソフトウェア ・SaaS(Software as a Service)パートナー、同社製品を組み込んでサービスを開発・提供するパートナー、再販パートナーの4つに分類している。
2024年にパートナーと実施した施策は、全国8拠点のIBM地域DXセンターにおいて開始当初と比較して2.8倍のパートナー協業したほか、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)/CSP(クラウドサービスプロバイダー)とはERP運用保守に特化したIBM幕張DXセンターの開設、製品の組み込みでは複数のLLM管理やマルチクラウドの最適化など、新規組み込みソリューショの発表、製品の再販では新規パートナーが対前年比1.6倍に拡大している。
最後に山口氏は「今年もパートナーの皆さんとともに、日本のお客さまに役立つ活動を進めていければと考えています」と締めくくった。