【2025年をどう占いますか?】答える人 キッコーマン名誉会長・茂木友三郎

付加価値を高める努力と価値を正当に評価する社会構築を

 ─ 世界は戦争紛争、政治でも分断が進み、混沌とした時代ですが、キッコーマン名誉会長の茂木友三郎さん、今後の日本の舵取りをどう考えていますか。

 茂木 現在、民主主義の危機というのは世界共通で起こっている事象であるように思います。日本はまだ危機状態にはなっていませんが、今回の総選挙では自民党の裏金問題で国民の不信感が高まり、与党大敗という結果になりました。今後、日本でもポピュリズムが出てくるリスクはあると思います。

 そこで日本の民主主義を守ろうということでできたのが、令和国民会議(令和臨調)という組織です。経済人だけでなく政治家、官僚、労働組合のリーダー、学識者が集まり、日本の民主主義を守るためにどんなことが必要かを考え提言をまとめています。

 経済界のためにということではなく、公の意識を持ってこれからの日本をどう良くしていくか、企業経営者はもっと意見を積極的に発信していくことが必要だと思います。

 ─ 日本経済再生に向けて、中小企業と大企業の関係はどうあるべきだと考えますか。

 茂木 企業の大小にかかわらず、需要を創造する努力ということがポイントになってきます。需要を創造するということは、一言で言うと、人が欲しいと思った商品やサービスをつくるということです。需要が創造されれば付加価値が高まります。そうすることによって企業は成長します。国の経済も成長します。

 安く買い叩くといったことや値下げをせずに、商品やサービスの価値を、企業も消費者も正当に評価することが大事です。値下げはその企業にとっては一時的に良いかもしれませんが、長期的には経済社会全体を壊してしまいます。

 ですから値下げはある種の経済罰だとわたしは何度も訴えています。特に、価値のあるものを、量の力を使って値下げさせるということは暴力であり不当行為です。

 ですから、付加価値の高いものには相応の値段がついて、付加価値を高めた人はそれに見合う収入を得るという社会をつくっていかなければ、日本経済全体を成長軌道に乗せることはできません。価格競争ではなく質の競争で、日本社会をよりよくしていくといった形に持っていく必要があると考えています。