日本航空(JAL)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、塗料関連事業などを手がけるオーウエルは、旅客機の胴体にサメの肌のような微細な溝構造の「リブレット形状塗膜」を施し、JALの国際線に世界初導入するとと1月10日に発表。この塗装により、旅客機の燃費改善と、CO2排出量削減が期待されるという。
リブレットとは、水の抵抗を軽減するサメ肌形状からヒントを得て考案した微細な溝構造のこと。航空機の飛行時の空気の流れに沿って、機体外板に微細な溝構造を形成することで、飛行時の空気抵抗を減らせるという。
三者は航空機の脱炭素化を推進しており、その一環として、オーウエルが改良を重ねた「Paint-to-Paint Method」技術(既存の塗膜上に、水溶性の型で塗膜に凹凸を形成する手法)を活用。飛行機の機体外板の大部分にリブレット形状塗膜を施し、その耐久性や燃費改善効果を検証している。
2022年7月からは、JALの国内線を飛ぶボーイング737-800型機を使ってリブレット形状塗膜の耐久性を検証。2023年11月からは、胴体下部に大面積の施工をして燃費改善効果の確認を進めてきた。Paint-to-Paint Methodでは、塗膜に直接リブレット形状を施工するため、デカールやフィルムによるリブレット加工と比べて、重量の軽減や耐久性の向上が期待できるという。
今回、JAXAによる風洞試験や数値解析により、JALの国際線を飛ぶボーイング787-9型機相当機体の抵抗低減効果を確認できたことや、オーウエルの機体大型化に対応したリブレット塗膜施工システムの開発により、国際線機材の胴体上部まで施工面積を拡大して検証を進めることになった。国際線で使われる機体は長距離を飛行するため、さらなる燃費改善効果が期待できるとする。
リブレット形状塗膜を施した機体は、ボーイング787-9型機(JA868J)で、この機体の大部分に同様の塗膜を施したことと、このような機体を国際線として運航するのは世界初とのこと。
同機体では、巡航時の空気抵抗率が0.24%となり、年間約119トンの燃料消費量と、約381トンのCO2排出量の削減が期待できるとしており、これはスギの木約27,000本の年間CO2吸収量に相当するとしている。