EYストラテジー・アンド・コンサルティングで戦略コンサルティングサービスを提供するEYパルテノンが、地政学が今後1年間で世界の市場にどのような機会と課題をもたらすかについて考察するレポート「2025 Geostrategic Outlook(2025年に予想される地政学的動向トップ10)」を発表した。

EYは、2025年に世界的な潮流を形作る3つの主要テーマを特定。

1つ目のテーマは、選挙後の政治指導者は選挙戦から統治へと焦点を移し、これにより世界中の政策や規制が変化する可能性。

2つ目のテーマは、各国政府が経済上の優位性・競争力および経済主権を確保するために保護的な政策を強化する可能性が高まり、特に、デジタル技術と気候技術が注目されること。

3つ目のテーマは、地政学的競争が激化する中で、各国が独自の外交政策やビジネスルールを作るため、クロスボーダービジネス活動と両立し得ない基準やシステムなどが制定され、グローバル経済をさらに複雑化させること。

これら3つのテーマに基づき、2025年に予想される地政学的動向がリストアップされている。

第1のテーマ:各国リーダーの軸足は選挙から統治へ

第1のテーマに関連した動向としては、以下が挙げられている。

(1)ポピュリズム政策の影響

ポピュリズムの影響から、保護主義の強化、移民の制限などが懸念され、グリーン政策には圧力がかかるという。

これにより、同社はCEOに対し、社内外のセンシティブな政治的課題に対処するためのコミュニケーション戦略を策定し、地政学的動向から生じ得る事業上のリスクやレピュテーションリスクを軽減することを勧めている。

(2)課税に関する難題

各国の新政府は、債務負担残高を減らすため、企業への法人増税、資産への課税、高所得世帯への増税をはじめとする代替戦略を模索することが予想されるという。

そのため、同社は企業に対し、ステークホルダーと協力して、潜在的な税制改正の影響を明確化しつつ、政府が効率的な税制政策を形成するのを支援することを勧めている。

(3)人口動態から見える分断

人口の高齢者層、若年層、移民層とが相互に及ぼし合う影響が、内外の政治的な力学をつくり変えている方向性に拍車をかけると見られるという。

そのため、経営者は移民の経済的な正当性を政府に訴え、人材の獲得と維持に資する柔軟な労働移動の枠組みの設立を支援することが重要となる。

第2のテーマ:各国における経済上の競争と経済主権

第2のテーマに関連した動向としては、以下が挙げられている。

(4)デリスキング(リスク低減)と依存関係

各国の政府は経済安全保障上の措置を加速させていくとみられるが、その結果、企業や国境にまたがるサプライヤー関係の複雑な供給網が生じることが考えられる。

そのため、経営者は、新規市場の多様化を進める際は透明性を優先事項として、本国にとっての地政学的ライバルとの接触を先んじて最小化すべきことが求められるという。

(5)デジタル主権

デジタル技術の戦略的重要性の高まりから、各国はデジタル空間を政府のコントロール下に置くための政策や規制の施行を加速することが予想されている。

そのため、経営者は、AIアルゴリズムや半導体、ネットワークインフラに関連する産業政策により生じ得る投資機会について評価・検討が求められるという。

(6)気候政策と内在する競合

気候政策は、経済、地政学、価格という3つの競合的な力の拮抗によって動くと考えられるという。

そのため、経営者は、矛盾する各国の気候規制がクロスボーダー事業の相互運用性や長期的なサステナビリティ戦略にどのように影響を与えるかを精査することを求められる。

地政学的競争の激化

第2のテーマに関連した動向としては、以下が挙げられている。

第3のテーマ:新たな局面にある地政学的エネルギー情勢

各国の政策により、地政学的エネルギー情勢の拮抗は引き続き影響を受けながら変化するが、その影響によりグローバルなエネルギー移行の速度は不確実性をもたらすという。

そのため、企業は、同時進行的な各国のエネルギー移行が企業の戦略やコンプライアンスにどのように影響を与えるかについて評価すべきと考えられている。

(8)新興国市場の統合

グローバルサウスによる新興国市場の地域経済統合、多国間機関における改革への2つの圧力が、グローバルな事業運営環境をより複雑にするという。

そのため、経営者はその新興国市場が最大の機会をもたらすかについて調査し、どのシナリオを用いれば適切な市場参入あるいは撤退の決定ができるかについて考察する必要があるという。

(9)戦争と紛争

現在進行中の戦争・紛争が継続する中、国や集団内外における緊張のエスカレーションは、現実世界とサイバースペースの双方で新たな戦争・紛争を引き起こす可能性があるという。

これにより、経営者は、将来の潜在的紛争シナリオの事態に向けたレジリエンスを強化することが求められる。

(10)宇宙政治と宇宙経済

技術能力と宇宙資源の所有権を主張するため、多くの国・地域で競争が激化するにつれて、多極化する宇宙競争は新たな域に達することが予想される。

そのため、企業にとっては、新しいスキルセットを育成し、事業運営全体のレジリエンスを構築することが重要だという。