古野電気とTOAは、建設現場において災害時など有事の連絡手段をネットワークで構築できるか検証する実証実験を行ったと12月24日に発表。TOAの「IPオーディオシリーズ」や、古野電気の「ウェーブガイドLAN」などを連携させてフルIP放送システムを構築し、現場で確実に放送できることを確認した。
今回は実際の建設現場を検証環境として使い、「全フロアへの一斉放送」と「特定フロアの個別放送」のふたつの実験を実施。
古野電気からは現場内ネットワークを構築する無線LAN設備「ウェーブガイドLAN」と、作業員のフロア検知を実現するセンサーシステム「リモートモニタリングシステム」、TOAからはネットワーク放送システム「IPオーディオシリーズ」を建設現場へ導入し、現場内でのIP放送システムを構築した。
前者の実験では、ウェーブガイドLANを活用し、ビル現場内の無線ネットワーク構築と全フロアでの一斉放送を確認。複数のIPオーディオシリーズのスピーカーに対して、同時にパケットを送信するマルチキャスト(ひとつのデータを特定の複数の端末へ同時に送信する、1対多の通信方式)により放送を実現している。
一般的に、無線ネットワークにおける音声のマルチキャストストリーミングは、遅延や音声途切れが発生しやすいという懸念があるが、ウェーブガイドLANを含む古野電気の「ゼンゲンバLANシリーズ」を用いることで、良好な音声放送が行えることを確認。災害時の円滑な避難指示など、現場の安全性強化が期待できるとのこと。
後者の実験では、リモートモニタリングシステムを活用し、各フロアにいる作業員を特定したうえで、特定フロアのみに放送する実験を行った。このセンサーシステムは、作業員のヘルメットに取り付けたBLE(Bluetooth Low Energy)センサーを、各フロアのゲートウェイ(センサーから取得したデータをクラウドサーバーへアップロードする機器)で検知することで、作業員のいるフロアを特定できるというもの。
センサーデータを元に特定したフロアにおいて、SIPユニキャスト通信による個別放送が行えることを確認できたほか、作業員の位置を特定して個別の連絡をするといった、現場の業務にも役立つとしている。なお、SIPは通信プロトコルのひとつで、IPネットワークを通じて、音声やビデオ通話などのリアルタイムコミュニケーションを可能にするもの。特定の端末を対象としてデータを送信する1対1の通信方式のことを、ユニキャストという。
両者は実証実験の背景について、スマートフォンなどのデバイスが普及したことで、建設現場では放送設備を設置することが少なくなった一方、スマートフォンを持っていない作業員や連絡先を知らない作業員に対しては周知を行うことが難しく、災害など有事の際に、迅速に現場全体への周知や対応を促すことが課題だったと説明している。
今回の実験では、現場内無線ネットワークとIPスピーカーによるシステムによって、現場で確実な放送が行えることを確認。突発的な豪雨や大地震といった自然災害のリスクも近年高まっているなか、検証したシステムは現場管理者にとって有効なものであることが確認できたとのこと。