ベネッセとサイバーエージェントは12月11日、両社で協業体制を構築し、「AIクリエイティブセンター」を設立することを発表した。

この設立に伴い、両社は記者説明会を実施。説明会には、ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO(Chief DX Officer)の橋本英知氏、サイバーエージェント 常務執行役員の内藤貴仁氏が登壇した。

  • 左からベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO(Chief DX Officer)の橋本英知氏、サイバーエージェント 常務執行役員の内藤貴仁氏

    左から、ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO(Chief DX Officer) 橋本英知氏、サイバーエージェント 常務執行役員 内藤貴仁氏

「AIクリエイティブセンター」の概要

今回発表されたAIクリエイティブセンターは、生成AIを活用した制作・マーケティング領域の業務改革を目指す新しい取り組みで、「最新のAI技術」「AIデザイナー」「ナレッジを蓄積・活用」という3つの要素で構成される。

まず、制作拠点を一元化して効率的にクリエイティブ制作を行うための施設として、「沖縄AIクリエイティブセンター」を設立する。同施設には、ベネッセとサイバーエージェントからそれぞれ数十人が専任・兼任の形で参加する。

  • 「沖縄AIクリエイティブセンター」のオフィスのイメージ

    「沖縄AIクリエイティブセンター」のオフィスのイメージ

さらに、サイバーエージェントがベネッセ専用のAIを開発し、制作ノウハウをデータベース化して蓄積することにより、制作のクオリティを向上させるほか、制作期間の短縮とそれに準じた制作コスト削減を目指す取り組みが行われる。

これまでベネッセには、「多様な顧客に対し多様なプロダクトを提供、さらに制作が属人化しているため、顧客のニーズに合わせた提案がやりきれない」というクリエイティブ制作の課題が存在していた。

  • クリエイティブ制作の課題

    クリエイティブ制作の課題

これらの課題に対して、AIクリエイティブセンターを活用することで、多様化する顧客のニーズに応え、クリエイティブ制作の「個別化×QDC(品質・コスト・納期)向上」を最新のAI技術により実現することが可能になるという。

ベネッセのAIを活用した取り組み

ベネッセグループは、これまで教育、介護・保育、生活といった分野で人々のライフステージに沿ったさまざまな社会課題の解決に取り組んできた。

加速する少子化、格差の拡大、高齢化率の上昇、テクノロジーの進化など、社会が大きく変化する中、教育分野では、1969年に現在の「進研ゼミ」の前身である「通信教育セミナ」、2014年からは紙の教材に加えてタブレット講座を開講、2023年には生成AIを活用したサービス展開を開始している。

これまでは学習履歴からの予測を中心とした価値構築を行っていたが、生成を行えるようになったことを契機に価値提供が広がっているそうで、「AI学習コーチ」「自由研究お助けAI」「AI『しまじろう』」など最新のテクノロジーを活用しながら子どもたちの学びに寄り添う商品を提供している。

  • ベネッセのAIを活用したサービス

    ベネッセのAIを活用したサービス

今後ベネッセは「変革事業計画」として、「人を軸にした社会課題の解決に圧倒的に取り組んでいる企業グループ」「ポートフォリオ構造の変革を通して、持続的利益成長を目指す」「『コア教育』『コア介護』『新領域』が利益の三本柱となる状態を実現」という3つを目指す。

この目標に向け、今回発表した「AIクリエイティブセンター」だけでなく、社内の業務改革においても最新のテクノロジーを活用し、推進していくことを目標に掲げている。その達成に向け、デジタル広告や最先端のAIの知見を持つ、サイバーエージェントとAI技術を活用したオペレーション改革を実現する取り組みを開始することを決定したという。

今回の協業では、70年の教育に携わるノウハウや知見、多様なマーケティング・クリエイティブの経験を持つベネッセと、最先端のAI技術と知見、豊富な人材を活用して円滑な業務推進体系を築いているサイバーエージェントの2社が、最先端の技術を持つビジネスパートナーと共同で取り組み、スピード感を高く推進していく体制となっている。

今後、サイバーエージェントは、同取り組みを通じて、体制構築のサポートおよび広告クリエイティブにおける表現の多様性・予測精度のさらなる向上を図る研究開発を進めることで、ベネッセのクリエイティブ制作における業務改革を支援する構え。

またベネッセは、AIクリエイティブセンターを活用することで、品質を高いレベルで均一化することと、制作期間と制作工程を半分にすることを目標に掲げている。さらに生産性を高め、マルチモーダルでのパーソナライズ化の推進およびナレッジをデータベース化し、レスポンスの予測機能を強化することを目指す。