旭化成は12月9日、材料の新規用途探索や製造現場の技術伝承において生成AIの活用を開始したことを発表した。過去のデータやノウハウなど、これまで蓄積された無形資産の活用を生成AIによって加速し、競争力強化や事業上のリスク低減を目指す。
旭化成の取り組み
旭化成は、2023年5月からグループ全体での積極的な生成AI活用を支援し、業務効率化を進めてきた。今後は生産性向上に加え、上記のような競争力強化や事業上のリスク低減に生成AIを活用していきたい構え。
同社では、生成AIを活用して以下の取り組みを進めていく。
新規用途探索の自動化による競争力強化
従来は、専門性を持つ従業員の調査・分析によって用途の候補を考案し、その中から有望なものに絞り込みを行ってきた「新規用途探索」において、生成AIを活用する。今回、専門人材と各事業領域が連携し、用途を自動抽出するAIと、その中から特に有望な用途候補を抽出する生成AIを開発した。
それにより、すでに膨大な文献データから6000以上の用途候補を考案したほか、ある材料では候補の選別にかかる時間を従来の約40%に短縮することができたという。
今後、材料化学や医療分野の新規用途探索で活用を進めていき、将来的には生成AIにより他社製品の技術分析を行うことで、協業先選定に活用することも視野に入れている。
製造現場の技術伝承によるリスク低減
製造現場では、事故や災害を防ぎ安全に設備を運用するために、作業前に想定されるリスクを洗い出して対策を図る「危険予知」の活動を行っているものの、熟練社員の高年齢化および退職により、ノウハウの継承が課題となっている。
従来は個人の経験をもとにリスクを予知していたが、過去事例のデータを読み込ませた生成AIを活用することで、経験の浅い従業員でも抜け漏れなくリスクと対応策を洗い出し、安全性と効率性を高めるとともに、技術伝承を加速できるようになったという。
今後は、作業前の危険予知に加え、画像・音声など工場の各センサーから取得した非構造化データを解析し、作業中の危険回避にも役立てていく予定。