日医工と富士通は12月5日、富士通の行動分析AIサービス「Fujitsu Kozuchi for Vision」と、ブロードリーフの作業分析・業務最適化ソリューション「OTRS」および「OTRS+AI」を活用して、日医工の医薬品製造現場における無菌室の入退室時の作業漏れ検知や製造技術者の早期育成に向けた共同実証実験を推進していることを発表した。

日医工は医薬品の製造工程や検査工程の品質向上と業務効率化のため、医薬品製造DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを進めているという。同社は特に、無菌製剤の製造工程における作業品質の標準化、および新人や中途採用者の早期育成が課題と捉え、その解決を目指す。

今回、日医工と富士通の両社は、これらの課題を解決するため、日医工の製造工程における作業漏れ検知の高度化や、ベテラン技術者のノウハウ継承による技術者の早期育成を目的に、AIを活用した共同実証実験について合意。両社は医薬品の供給不足解消に向けて医薬品製造のDXを加速するとのことだ。

作業漏れ検知の高度化

今回の実証は、日医工岐阜工場の医薬品製造現場での作業において、リアルタイムに人の動作を検知する技術を搭載した富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi for Vision」を活用する。

無菌室の入口に設置した監視カメラの映像データから、入退室時に無菌製剤の製造過程で適正かつ標準化された作業が確実に行われているかを分析し、技術者の作業漏れをリアルタイムに検知できるかを確認する。

検知結果の通知方法として、現場技術者に対するアラーム音や警告ライトの点滅による喚起、スマートフォンの活用など、複数の仕組みを検討する。適正かつ標準化された作業実施の再確認と再実施を確実に行うことで、非標準的な作業に起因する製品廃棄処分をゼロとし、無菌製剤の安定供給を目指すとのことだ。

  • 非標準的な作業の検知例(左:OK行動、右:NG行動)

    非標準的な作業の検知例(左:OK行動、右:NG行動)

  • 埃を吸引する動作の検知

    埃を吸引する動作の検知

  • 複数人同時の手洗い消毒作業の検知

    複数人同時の手洗い消毒作業の検知

ベテラン技術者のノウハウ継承による技術者の早期育成

医薬品業界における製造現場の人材不足や現場技術者の早期育成に向けては、ブロードリーフの生産性向上・業務最適化ソリューション「OTRS」、および、富士通の作業分節AI技術を搭載した「OTRS+AI」を適用する。

まず、ベテラン技術者の作業映像から要素作業ごとに分割したデータを教師データとして作成し、AIに学習させる。次に、経験の浅い技術者の作業映像を学習したAIが自動で作業分節したものと、先に作成した教師データを並列表示し、教育指導者が比較検証しながら経験の浅い技術者のスキルアップを促す。

これにより、技術者のスキルレベルを短期間でベテラン技術者のレベルまで引き上げることを目指す。また、技術習得時間の短縮だけでなく、動画による作業標準マニュアルの作成や技術者の事前の動作シミュレーションなど、人材育成全体で効率化を図ることで教育にかかるコストを削減し従来比50%の削減を目指す。

  • 左:ベテラン技術者、右:経験の浅い技術者の並列表示による動作比較シーン

    左:ベテラン技術者、右:経験の浅い技術者の並列表示による動作比較シーン