アドビは11月28日、コンテンツサプライチェーンである「Adobe GenStudio」の最新アプリケーション「Adobe GenStudio for Performance Marketing」に関する記者説明会を開催した。
説明会では、企業のブランドに合ったパーソナライズされたコンテンツ制作を可能にする「Adobe GenStudio for Performance Marketing」について、企業やエージェンシーがマーケティングキャンペーンの配信をどのように加速できるようにするか、というテーマで説明が行われた。
説明会には、アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング部 執行役員の鵜瀬総一郎氏、デジタルエクスペリエンス事業本部 プリンシパル ビジネスデベロップメントマネージャーの阿部成行氏が登壇した。
これからのコンテンツ制作には「マーケター」が重要
まず、阿部氏は「顧客体験はAI時代に抜本的に変革されつつある」ということを説明した。ただし、「コンテンツ」「データ」「ジャーニー」が顧客との関わりの中核を担い続けるということは変わらない、という見解も示した。
「これからのデジタルビジネスでは、膨大なコンテンツを扱うことが必要になってきます。これらのアセットは、コンテンツサプライチェーンの中で生成されていくものです。生成AIは、企業のコンテンツサプライチェーンの課題を強力に支援しています」(阿部氏)
現在すでに必要とされているコンテンツの提供と潜在的な要求・需要を満たすためにコンテンツ需要は年々増加している。この課題に対して、クリエイターの能力を最大限に引き出し、マーケターを強力に支援する生成AIの活用が注目されているという。
阿部氏曰く、これまでのコンテンツ制作の体制は「インハウス(社内のクリエイティブチーム)」と「エージェンシー(代理店)」という2つの組織が主要なコンテンツ制作者となっていたが、これからは新たなコンテンツ制作者として「マーケター(マーケティングチーム)」が参入してくることが予想されるという。
「マーケティングチームは、最もキャンペーンに近い存在であり、顧客が何を求めているかを理解している存在です。また、どのようにしたらブランドがコンテンツにスタイルを合わせて、『ブランドらしさ』を出せるかを最も理解している存在でもあるため、これまでのコンテンツ制作の体制にマーケティングチームが参入することが理想的な制作体制ではないかと考えています」(阿部氏)
「Adobe GenStudio for Performance Marketing」の概要
このように、高度にパーソナライズされ、ブランドに沿った、パフォーマンスの高いコンテンツを、無数のチャネルや地域をまたいで提供する必要性が高まっている一方で、利用可能なリソースが不足しているという、近年の企業が直面している課題を背景に開発されたのが「Adobe GenStudio for Performance Marketing」だ。
Adobe GenStudio for Performance Marketingは、10月に開催されたAdobe MAXにて発表されたもので、制作チームとマーケティングチームを連携し、ブランドに準拠した、高パフォーマンスでパーソナライズされたコンテンツをチャネル横断で作成する、生成AIファーストのアプリケーション。
生成AIと深いインサイトにより、マーケティングおよびクリエイティブ部門のキャンペーンを加速させることができるという。
同アプリケーションでは、Adobe FireflyとサードパーティのLLM(大規模言語モデル)を通じて、パフォーマンスマーケティング・ソーシャルメディアマーケティング・メールマーケティング・グロースマーケティング・ペイドメディアマーケティングなどの各種マーケティングのユースケースに対応するコンテンツのバリエーションを生成、リミックス、測定する機能を備えている。
さらにマーケターとクリエイターを結びつけ、ブランドに沿ったデジタル顧客体験の大規模な提供を可能にする。
Adobe GenStudio for Performance Marketingの活用により、企業は一元化されたセルフサービスアプリケーションで、これまでにないスピードと俊敏性を発揮し、事前承認を経た、ブランドに沿ったコンテンツを活用してソーシャルメディア広告、ディスプレイ広告、バナー、マーケティングメールなどを作成することができるようになるという。
これにより、ブランドボイス、チャネル、画像のガイドラインなど、ブランドの基礎要件を定義するクリエイティブ部門と、ペイドメディアなどの要求の厳しいチャネルに大量のバリエーションを配信する必要があるマーケティング部門を結びつけることが可能になる。
「Adobe GenStudio for Performance Marketing」の特徴
特徴としては、単純な生成AIではなくブランド・ペルソナ・製品に合わせたセルフサービスなコンテンツとして、画像やテキスト、フルエクスペリエンスを作成できることが挙げられている。
また、キャンペーン・コンテンツ・インサイトを一元管理できるほか、レビュー・承認・キャンペーンのアライメントを含むエンタープライズクラスのワークフローを行えるという。
さらにアドビにおけるクラス最高のコンテンツサプライチェーンアプリケーションにネイティブに拡張され、追加機能・ガバナンスインサイトを獲得できるという価値も提供されている。
ブランドコンプライアンスとしては、「ブランドガイドラインをアップデートして、トーン・オブ・ボイス(Tone of Voice)とチャネル固有の要件を確立する」「AIを活用したブランド検証により、すべてのコンテンツがブランドに準拠していることを確認」「組み込まれたレビューおよび承認機能を使用して、ブランドに準拠したコンテンツのみが公開されるようにする」という3点が設定されている。
またコンテンツとしては、「ユーザーフレンドリーなアセットリポジトリを使用してコンテンツを検索したり、Adobe Experience Manager Assetsのアセットにアクセス」「代理店やスタジオチームにOneDriveやDropboxから、チームが使用できる承認済みのキャンペーンコンテンツをアップロードするように依頼」「埋め込まれたAdobe Expressを使用して、生成塗りつぶし、背景の削除、画像のサイズ変更などのツールでアセットをすばやく編集」という3つのコンテンツが用意されているという。