アドビは9月26日、国内での提供開始に伴い、AI機能を備えたプロジェクト計画ツールである「Adobe Workfront Planning」の記者説明会を開催した。

説明会には、アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング部 執行役員の鵜瀬総一郎氏、同 デジタルエクスペリエンス事業本部 デジタルストラテジーグループシニアソリューションコンサルタントの萩原未来氏が登壇。Adobe Workfrontと新機能であるAdobe Workfront Planningが説明された。

「Adobe Workfront」って?

大規模な組織では複数のプロジェクトチームを立て、多様なキャンペーン施策を走らせている。しかし、多様なプロジェクト管理ツールが乱立すると、組織として全体を把握することが難しいという課題がある。

「キャンペーンの開始から終了までのタスクを見てみると、戦略&キャンペーン計画のフェーズでオポチュニティ分析とプラン策定を行い、その後コンテンツ制作&エクスペリエンス構築の段階を経て、エクスペリエンス配信や計測と最適化を行う、という多くのタスクを経る必要があります」(鵜瀬氏)

  • キャンペーンの開始から終了までのタスク

    キャンペーンの開始から終了までのタスク

また、システムや作業がサイロ化してしまうことによって「この画像はどういう意図で作られたのか?」「この画像は誰が作ったのか?」「この画像はいつまで公開していいのか?」といった疑問が生まれてしまうのだという。

萩原氏はこのような課題の解決策として「CMS(コンテンツ管理システム)やDAM(デジタル資産管理)で管理していても、更新したコンテンツのアップロード・ダウンロードを繰り返し行わなければいけません。そんなコンテンツファイルの管理を省略できるのがAdobe Workfrontです」と製品を説明した。

  • 更新のたびにファイルのダウンロード/アップロードが繰り返される

    更新のたびにファイルのダウンロード/アップロードが繰り返される

Adobe Workfrontは、チームや組織が効率的に業務を計画、追跡、管理できるクラウドベースのエンタープライズ作業管理ソリューション。

2020年にAdobe Experience Cloudの一部となったワークマネジメントプラットフォームとして、T-Mobile、ADP、Marriott、Coca-Cola、Vanguard などの企業において、制作チームが与えられた作業を完了して、優れた顧客体験を提供するために使用されているという。

Adobe Workfront Planningの概要

そして、今回アドビはAdobe Workfront Planningの提供を開始したことを発表した。鵜瀬氏は、DAMの「Adobe Experience Manager Assets」に含まれる「Content Hub」を第1弾、Adobe Workfront Planningを第2弾として、プロジェクト推進業務の効率化に寄与すると説明した。

Adobe Workfrontの一部であるAdobe Workfront Planningは、マーケティングチーム全体にわたって断片化されたワークフローとデータを結びつけ、実用的なインサイトを提供することで、企業がより迅速にマーケティングキャンペーンを実行できるようにする機能を有している。

  • Adobe Workfront Planningのイメージ

    Adobe Workfront Planningのイメージ

マーケターは、実質的なリソース追加ができない中で、高度にパーソナライズされた顧客体験の提供を以前にも増して求められているという課題に対処するため、Workfront Planningでは業務のメタデータの定義・作成を通じて日々のマーケティング業務の完全な可視化を可能にしたという。

「同様のシステムにより、これまで営業や財務など他の部門はデータインテリジェンスを活用したプランニングや実行をしてきており、Workfront Planningはマーケティングに特化した記録のシステム(SoR)と言えます」(萩原氏)

Workfront Planningを活用することで、マーケターが個別のチームに情報をヒアリングして回らずとも、「今年、私たちは何件のキャンペーンを実施しているのか?」や「私たちのキャンペーンで最も頻繁に使用されている戦術は何か?」といった質問に迅速に答えられるという。

ユーザーは、整理・視覚化された情報とAI搭載の会話型インタフェースの両方を通じて、実用的なインサイトにすぐにアクセスできることにより、新規のキャンペーンの計画と立ち上げにかかる時間を短縮でき、タイミングや目標について異なるチーム間で調整するような、手間のかかる作業を排除できる。

また、生成AIを活用して情報を要約したり、マーケティング記録を最新の状態に保ったり、新規キャンペーンの準備を加速したりできるため、市場投入までの時間が短縮されるという特徴も兼ね備えているという。

Adobe Workfront Planningの具体的な機能

Adobe Workfront Planningの具体的な機能は、次のとおり。

整理および視覚化された情報

Workfront Planningのマーケティングカレンダーは、日々のマーケティング業務をわかりやすい形式で視覚化する。

例えば、タイムラインビューでは、すべてのアクティブなキャンペーンが、チームや関係者ごとにカスタマイズ可能な時系列で表示される。ロイヤリティプログラムの会員など特定のオーディエンスを対象としたキャンペーン、ホリデーシーズンのプロモーションなど特定の目的のためのキャンペーンを自動的に表示することも可能。

  • タイムラインビューのイメージ

    タイムラインビューのイメージ

スプレッドシートビューでは、各キャンペーンを深く掘り下げて確認でき、キーメッセージからチームメンバー、プロジェクトのステータスに至るまで、エンドツーエンドの可視性を提供する。

生成AIによるブリーフ作成

同機能を活用することで、既存の計画書を元にしたキャンペーンの登録を支援し、すぐに作業を開始することができる。マーケターは、既存のアセット(プロジェクトの詳細を説明するプレゼンテーション資料など)をアップロードするだけで、キャンペーン記録を作成し、マーケティングブリーフを生成することが可能。

同機能が提示する整理されたビューには、マーケティング戦術や目的、関連アセットやスケジュールに至るまでのすべてが含まれているほか、生成AIを搭載したWorkfront Planningの会話型インターフェイスにより、ユーザーは異なるキャンペーンを横断して詳細なクエリ情報を照会でき、プランニング段階で生じる緊急の質問への回答を支援する。

使いやすい記録管理

効果的なプランニングには、正確かつ最新の状態に保たれたマーケティング記録が不可欠。これらの記録にはターゲットとなるオーディエンスや地域、戦術、関連する事業部門など、マーケティングのメタデータとも呼ばれる詳細情報が含まれている。生成AIを搭載した会話型インターフェイスにより、プランの進展に合わせて記録を自動的に作成または更新することができる。

マーケターは、最新のキャンペーンの詳細を記載したWord文書などのアセットをアップロードするだけで、記録が自動的に更新される上、記録はマーケティンググラフとも連携し、チームやワークフロー間のつながりを視覚化することが可能。その結果、キャンペーンの整合性を高めるための追加のインサイトが得られ、市場投入までの時間を短縮することができるという。