NECは11月29日、「NEC光トランスポート事業の取り組み」と題して、光トランスポートの市場動向やNECの取り組みを紹介。説明には、NEC トランスポートネットワーク統括部長の佐藤壮氏が登壇した。

光トランスポートの市場動向

最初に佐藤氏は、「光トランスポート市場予測」というテーマで、光トランスポートの市場動向を説明した。

「光トランスポート領域において、グローバルで市場は拡大傾向にあります。特にデータセンタ市場は、年平均成長率が約7%と急成長しています。総務省もオール光ネットワークに関する研究開発や社会実装の推進、データセンタ分散化を後押ししています」(佐藤氏)

  • トランスポートネットワーク統括部長 佐藤壮氏

    トランスポートネットワーク統括部長 佐藤壮氏

また佐藤氏は、「都市化や人口減少に伴う社会課題への直面」「生成AIなどの活用によるサービスの多様化」といったことを背景として、社会変化に適応するためにネットワークは「光化」「オープン化」していく、というネットワーク進化の方向性を述べた。

「都市化、人口減少、技術革新といった社会変化を受けて、今後ネットワークは、『データセンタ分散化』『オペレーションの高度化』『MtoM(機械同士)接続対応』といった進化をしていくことが予想されます。またそれに伴い、オール光化とオープン化が進んでいくことも想定されます」(佐藤氏)

  • ネットワーク進化の方向性

    ネットワーク進化の方向性

ネットワークの進化に向けたNECの取り組み

このようなネットワークの進化に向けて、NECではオープン化/オール光化による価値をオペレータに提供し、ネットワークの進化を推進している。

オープン化については、ベンダロックインの排除や適切な機能分離による「ネットワーク構築の投資最適化」、機器調達先の多様化によるサプライチェーンリスク軽減による「レジリエンス向上」、さまざまな企業が自社の強みを発揮できる領域への参入・共創による「イノベーションの加速」、マルチベンダ環境でのオペレーション業務変革による「サービス提供の迅速化」を行う。

またオール光化については、遠隔でのMtoMの通信に対応可能な「リアルタイム接続の実現」、カーボンニュートラル社会い向けた光化とNW全体制御による「高効率化・省電力化の実現」という価値提供を実施する。

  • オープン化/オール光化による価値提供

    オープン化/オール光化による価値提供

活動ロードマップとしては以下の通りで、パートナー共創・ユースケース検証・小規模APN適用を経て、商用導入を本格化させる。

さらに光オープン標準化対応、オープン化光製品の提供を推し進めることにより、光トランスポート市場に展開していく方針。

  • 活動ロードマップ

    活動ロードマップ

続いて「NECの光製品の展開の方向性」としては、オープン光トランスポート製品である「SpectralWave WXシリーズ」の特徴について語られた。

SpectralWave WXシリーズは、垂直統合型の従来モデルとは異なり、ネットワークを構成する機器を機能毎に分割するディスアグリゲーション(機能分離)を実現しているもの。必要な機能を選択しての設置および交換が可能となり、長期に渡り費用を抑えながら機器構成の最適化を実現している。

ハード/ソフト/デバイスをトータルインテグレーションしているほか、既存/新規製品のオペレーションを共通化しているという特徴を兼ね備えている。

光を活用したユースケース

最後に「光を活用したユースケース」というテーマで、NECがユースケース確立に向けた活動状況を紹介された。

同社ではIWON APNを活かしたユースケース確立に向けて、パートナー協業を含む実証検証を実施している。

同ブリーフィング内では、ユースケースの一例として、「InterBEE 2024」「NICT 雪まつり実験」などの事例が紹介された。

InterBEE 2024の事例

NECは、11月13日~25日に開催された放送・音響などのメディア総合展であるInterBEEのパビリオンブースに参画した。

同パビリオンでは、テレビ北海道、NTTコミュニケーションズと共同で広域リモートプロダクション(撮影現場と制作拠点をネットワークで接続し制作すること)を実演した。実際に北海道の番組制作のマスター(映像素材切り替え、送出)を会場からAPN経由で制御する様子を紹介した。

NICT 雪まつり実験の事例

NECは、2024年2月4日~7日に開催された、NICTによる「雪まつり超高精細映像配信実験」に参画した。

雪まつり超高精細映像配信実験は、先端技術を持ち寄り、映像伝送などの実験および技術者育成と交流を行うことを目的に実施されたもの。

北海道から東京区間において、超高精細映像(8K)をAPN経由で配信する実験で、北海道札幌市、東京、石川、大阪、沖縄を接続して行われた。

同社では、上記のユースケース以外にも「APNを経由したリアルタイム顔認証」「NEC×日本オラクル共創活動」「データセンタ(DC間光接続)」といった事例も

最後に佐藤氏は「オープン化とオール光化を推進することにより、社会課題の解消、新たなサービス創出に向けて貢献していきます」と今後の意気込みを述べていた。