【厚生労働省】手強い社会保険料の「壁」 国民民主との政策協議がカギ

10月27日投開票の衆院選で与党が過半数を割り込んだことを踏まえ、国民民主党との政策協議が今後の政局のカギを握る。国民民主は所得税の負担が生じる「103万円の壁」の抜本改革を掲げており、年末の税制改正作業で大きな焦点になりそうだ。パート労働者らが手取り収入の減少を避けて就業調整する「年収の壁」をなくして企業の人手不足を解消する狙い。

 一方、同党は社会保険料が発生する「106万円の壁」や「130万円の壁」の解消は声高に主張していない。保険料の壁を残すのは手取りを増やす上で不都合なはずだが、厚生労働省からは「国民民主は、社会保険料の壁の手強さをよく分かっているのでは」(幹部)との声が聞かれる。

 国民民主が求めているのは、所得税の基礎控除などの非課税枠を現行の103万円から178万円に引き上げるというものだ。同党は「国民の手取り収入を増やす」と意気込む。ただ、政府は大幅な税収減を懸念している。

 一方、年金や健康保険といった社会保険料が発生する壁は複雑な制度になっている。まず106万円の壁は正確な表現ではなく、月額換算した8万8千円が正しい。賃金以外にも所定労働時間週20時間以上といった要件も同時に満たす必要がある。

 8万8千円や週20時間を意識して就業調整しているパート労働者もおり、厚労省は来年の年金制度改正で企業規模要件の撤廃などを検討している。130万円の壁は全ての人が保険料を負担するラインだ。

 年収の壁では手取りの減少ばかり注目されるが、「社会保険料を負担すれば年金額の増などの恩恵も受けられる」(厚労省幹部)。106万円や130万円の壁による手取り減少を解消するにはサラリーマンの配偶者が公的年金の「第3号被保険者」として保険料負担を免除される制度を廃止する必要がある。先の幹部は「3号の対象者は未だに700万人以上おり、簡単に廃止できない」と話す。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト・熊野英生の見方「石破茂首相の経済政策」