日立製作所(日立)がグループ会社19社を対象にした公募を効率化し、人的資本経営を加速している。日立ソリューションズの「リシテア/人財マッチング」をグループ公募選考システムとして2023年10月に導入し、応募受付から先行終了まで一貫してシステム対応できるようにした。応募者と募集部門の業務効率化につなげることで、年間の応募者数が約900人と2023年度下期実績で25%増えたという。

  • 日立はグループ19社の「社内転職」を効率化している

    日立はグループ19社の「社内転職」を効率化している

日立グループ19社対象の公募制度とは?

日立における社内公募制度は1991年に開始され、2003年以降に一部グループ会社も含む現在のグループ公募制度へと発展した。目的は、日立グループの人材を有効活用し、適正配置を図ることだ。これまで事業再編による出入り(追加や脱退)が断続的に発生してきているが、公募制度に参加するグループ会社の総数は20弱で推移してきている。

2024年11月現在、日立を含むグループ会社19社を対象に運用しており、年間800件以上の求人がある。しかし、グループ公募選考システム導入前は、応募書類のチェックや応募者管理などを手作業で行っており、これらの求人を管理する日立の人事部門にかなりの負荷がかかっていたという。また、募集部門と応募者のやりとりがすべてメールで行われていたため、選考状況を把握しづらいという課題もあった。

取材に応じた日立 人事勤労本部 タレントアクイジション部 部長代理の大久保健一郎氏は「日立の人事部門では選考の進捗状況を把握しづらい、募集部門も応募者にとっても次のアクションが判断しづらいという課題があった。加えて、日立ではジョブ型人材マネジメントへの転換を進めており、グループ社員が自律的にキャリアを考え実現していくためには、より効率的な運用が必須だと考えた」と振り返った。

  • 日立製作所 人事勤労本部 タレントアクイジション部 部長代理 大久保健一郎氏

    日立製作所 人事勤労本部 タレントアクイジション部 部長代理 大久保健一郎氏

アナログな手作業をすべてシステム化、応募者数が増加

日立が導入した「リシテア/人財マッチング」は、社内公募や社内FAを効率化し、社内人材の流動化を促進し、組織の活性化を支援するサービス。複数の異動制度を1つのシステムで運用することが可能で、既存の人事システムと柔軟に連携できる。

応募者向けのホーム画面では、選考状況や異動手続き状況が一目で分かり、求人情報は条件で絞り込むことができる。募集部門も選考に必要な情報を一元管理でき、応募者のプロフィール確認から書類選考、合否通知までをシステムで完結できる。面接係数の変更なども柔軟に対応可能で、選考関係者が複数人いてもスムーズに調整できる。

  • 「リシテア/人財マッチング」応募者向け機能

    「リシテア/人財マッチング」応募者向け機能

  • 「リシテア/人財マッチング」募集部門向け機能

    「リシテア/人財マッチング」募集部門向け機能

いわば「社内転職」を推奨することで、従業員のモチベーションは向上し、優秀な人材の流出を防止することにもつながる。また採用コストも軽減できるだろう。

大久保氏は「このシステムを社内で活用してきた日立ソリューションズのノウハウへの期待が導入の決め手となった。これまでExcelによる手作業で行われていた業務がすべてシステム化され、本来注力するべき業務に向き合えるようになった」と話した。システム導入後は業務負荷が軽減されただけでなく、年間の応募者数の増加につながった。

また日立は、2024年10月から正式導入した社内副業制度にも「リシテア/人財マッチング」を採用。自律的キャリア形成に向けてチャレンジする従業員の背中を押している。

大久保氏に今後の目標について聞くと「社内公募は、あくまで従業員の自律的なキャリアを後押しする一つの手段にすぎない。社内公募数が多ければ多いほどいいというわけでもない。今後は、キャリア採用や社内副業、アルムナイ採用など、さまざまな手段を使って、組織と個人の成長につなげていきたい」と答えた。