衆院選の影響で、年末にかけて政府の経済運営は綱渡りが続き、加藤勝信財務相の手腕が注目されそうだ。11月に経済対策の財源を裏付ける2024年度補正予算を決定後、12月には25年度税制改正大綱と予算編成が待ち受け、主計局幹部は「かつてないほど厳しい日程だ」と話す。
予算編成作業の日程がタイトなのは岸田文雄前首相が衆院解散した3年前も同じだが、当時は自民、公明両党の議論が紛糾しても「両党幹部が党内で紛糾する意見を取りまとめる力があった」(大臣官房幹部)。だが、今回の衆院選は与党が苦戦し、石破茂首相の政権基盤が揺らげば「さらに綱渡りになる」(同)からだ。
政府は10月11日の閣議で、1月の能登半島地震や9月の能登地域の豪雨災害からの復旧・復興支援など24年度予算の予備費から計約1325億円を支出することを決定。加藤氏は記者会見で能登地域の復旧・復興支援について「被災者の方々の声に寄り添いながら、被災地の復旧と創造的復興を一層加速していきたい」と述べた。
加藤氏の手腕が求められるのは日程管理だけではない。
日銀が3月にマイナス金利を解除し、7月には追加利上げを決めるなど日本経済が「金利のある世界」に転換したことで財政運営では長期金利の上昇に伴い国債利払い費が上振れるリスクを抱えることになった。主計局幹部は「この30年、利払い費を考えずに予算編成ができた。われわれにとって今年は新たな局面だ」と語る。
石破茂首相はもともと財務省に近く、財政規律を重視する姿勢だったが、選挙後も政権支持率が低迷すれば、安全保障政策と同様「変節」し、物価高対策として歳出拡大に転じる可能性がある。この数年は大盤振る舞いが続いた補正予算を25年度はどのくらいの規模で取りまとめるか、加藤氏の手腕が試されそうだ。