ファッションECモール「ZOZOTOWN」を運営するZOZOは、2018年9月に広告事業(リテールメディア)を本格スタートした。広告メニューの1つである検索連動広告「ZOZOAD」は、2024年10月時点で「ZOZOTOWN」の出店ショップの約6割が利用している。「ZOZOTOWN」で培ったデータの活用や広告メニューの拡充により、2025年3月期に広告事業の売上高を前期比18.1%増の115億円まで拡大することを目指す。ZOZOの広告事業の現在地や取り組みについて、グループ事業戦略本部 山口琢也本部長とグループ事業戦略本部 広告推進ブロック 田代七子氏に聞いた。
──ZOZOの広告事業の現状は?
山口:2024年3月期における売上高は前年比25%増の97億円と急成長している事業だ。
「ZOZOTOWN」においては、出店するショップが利用する検索連動広告「ZOZOAD」を軸に、「タイアップ広告」「ディスプレイ広告」「同梱広告」「パッケージ広告」「ZOZOTOWN DM広告」「LINEオフィシャルアカウント広告」を提供している。
現時点での利用状況は「ZOZOAD」の割合が大きいが、「ZOZOTOWN」出店ショップ以外も対象となる「同梱広告」や「ディスプレイ広告」の利用が増えている。
<購買と広告のバランス>
──ZOZOの広告事業の強みは?
山口:「ZOZOTOWN」にはファッション好きのユーザーが多いことから、ユーザー情報を活用した広告を出せるのが強みだ。プラットフォーマーとして購買体験を第一に優先し、広告と購買行動を両立させるようバランスを取っている。
購買体験を邪魔するような広告にならないよう綿密に調整し、「心地よい体験のプラスアルファ」としての広告にこだわっている。
田代:認知の拡大や購入の後押しなどの幅広いニーズに対して、リーチ、ターゲティング、表示のタイミングが異なるメニューをそろえていることで、効果的に広告を出すことができる。
山口:主軸である検索連動広告「ZOZOAD」は、広告主のリピート率が高い。広告の見せ方や効果といった表だけでなく、登録作業などの運用の手間や、実績を確認するダッシュボードなどの裏にこだわったことが支持につながっている。
──「ZOZOTOWN」の出店ショップ以外の企業はどのように広告を活用しているのか?
山口:出店ショップ以外にも広告主の対象を広げたことで事業を拡大してきた。ファッションを切り口として、「食」や「暮らし」などライフスタイルにアプローチできる。
顧客に届ける段ボールの中にチラシやサンプルを入れる「同梱広告」は、洋服を買ったユーザーの年代や属性といったデータに合わせて、ライフスタイルに関する商品やサービスを紹介している。
田代:例えば、ニットやカーディガンの注文ではデリケート衣料用の洗剤、シューズでは絆創膏など、「同梱広告」では、実際に使用場面を想像できるようにリーチすることで、効果を高めている。
<購入直後に「親和性の高い商材」を表示>
──2023年10月に開始した、商品購入後に表示するページを活用した「ディスプレイ広告」とはどのようなものか?
田代:商品の購入直後の画面で、ユーザーに親和性が高い商材を表示する。満足度が高い瞬間に「これを伝えたら生活が豊かになるかも」とわくわくするような追加情報を届けることで、広告の効果を高める狙いだ。
山口:「ZOZOAD」は、欲しいもののイメージがついている状態で検索するため、購入の後押しとなる役割を担っている。対して「ディスプレイ広告」は、実店舗で例えると、店の去り際にスタッフが「そういえばここのランチおいしかったよ」とファッションに関係ないちょっとした情報を付け足すイメージだ。
「どのタイミングで何を伝えるのが顧客にとって良いか」を常に探求している。
▲ZOZO グループ事業戦略本部 広告推進ブロック 田代七子氏(左)、グループ事業戦略本部 本部長 山口琢也氏(右)
──今後の展望は?
田代:他社にあってもZOZOにはまだないメニューもある。これからも幅広いニーズに応えるメニューを開発し、広告主の幅を広げたい。
山口:115億円という大台を目指す上で、今年度は節目になると思う。広告サービスとして後発であることから今は道半ばで、やれることはまだ多い。
カスタマージャーニーの中で、広告としてできることをこれからも模索していく。そのためには、ユーザーの行動やリアクションを丁寧に見ていくことが大切だ。ユーザーファーストの姿勢で基盤を強くし、事業を伸ばしていきたい。