「グローバル市場での成長を的確に捉え、企業価値・株主価値の更なる向上が見込める段階を迎えている。まだまだ未進出の国があり、今後も大きな成長の可能性を秘めている」と語るのは、セブン&アイ・ホールディングス社長の井阪隆一氏。
カナダのコンビニエンスストア大手・アリマンタシォン・クシュタール(ACT)からの買収提案に揺れるセブン&アイ。10月24日にIRデー(投資家向け説明会)を開催し、国内外でのコンビニ事業で成長を拡大する方針を改めて示した。
2024年2月末時点で、セブン-イレブンは世界20カ国・地域に約8.4万店舗を運営しているが、30年までに世界30カ国・地域、10万店舗に拡大。23年度に約17.7兆円のグループ売上高を30年度に30兆円以上へ引き上げる計画だ。
同社が「世界30兆円」と言及したのは初めてで、具体的な成長ストーリーを示すことで、カナダ企業の買収提案に対抗する狙いがあるとみられる。
10月10日、将来的に社名を変更し、大胆なグループ再編に踏み切ることを宣言したセブン&アイ。スーパーなど、コンビニ以外の事業を本体から遠ざけ、コンビニ事業に経営資源を集中させることで、企業価値の向上を目指す考えだ。
「新たなグループ構造に変革することで、各事業がそれぞれの成長スピードや成長課題に合わせて事業シナリオを描き、自律的な財務規律を持って、成長戦略にまい進することが可能となり、株主価値・企業価値の向上につながる」と語る井阪氏。
これまで外資による日本企業買収は経営不振の企業が対象となることが多かったが、今回は日本を代表する小売業への買収提案。セブンはどう企業価値を高め、自らの正当性を証明していくか。井阪氏の正念場はしばらく続きそうだ。