KDDIは11月1日、2025年3月期の第2四半期決算について発表した。連結業績は前年同期比で増収増益となり、通期予想に対し順調に進捗しているという。第1四半期決算に続き、ARPU(Average Revenue Per Use:1契約当たりの平均単価)やDX(デジタルトランスフォーメーション)事業が成長をけん引した。

事業別に営業利益を見ると、グループMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)と楽天ローミングの収入が112憶円減、マルチブランド通信ARPU収入は46憶円増、金融・エネルギー事業は114億円増、ローソン持分法利益98億円増、DXは114億円増となった。その他、技術コストや販促費の増加などがあったものの、結果的には前年同期比で128億円増益となる5731憶円で着地。

  • 上期業績の概要

    上期業績の概要

2025年3月期上期は増収増益で順調に進捗

2025年3月期上期を振り返ると、売上高は前年同期比で2.8%増となる2兆8557億円。通期予想に対する進捗率は49.5%。営業利益は前年同期比で2.3%増の5731億円。通期予想に対する進捗率は51.6%だ。どちらも増収増益となり、順調な推移となっている。

  • 2025年3月期上期の連結業績

    2025年3月期上期の連結業績

上期の順調な業績について、CEOの髙橋誠氏は「第1四半期に引き続き通信ARPUが増収したほか、ビジネスセグメントではDX事業の営業利益が二桁成長できた。加えて、金融・エネルギー事業も増益を達成した」と、分析して見せた。

  • KDDI CEO 髙橋誠氏

    KDDI CEO 髙橋誠氏

同社は2026年3月期のEPS(Earnings Per Share:1株当たり純利益)目標達成に向け、サテライトグロース戦略の推進によって、主要事業と新事業領域の成長を目指す構えだ。そのために、ARPU収入やDX事業など柱となる事業の持続的な成長に加えて、新たな事業領域としてドローンやStarlink(スターリンク)などの収益基盤確立と、ローソンの取込み利益拡大を進める。

パーソナルセグメントは総合ARPU収入が拡大

パーソナルセグメントでは総合ARPU収入の拡大が顕著だ。通信および付加価値がどちらも成長した。auの通信ARPUは前年同期比で3%増、UQ mobileが7%増となり、共に成長。さらには、UQ mobileからauへの移行数が前年同期比で約2倍となるなど、ブランドミックスも改善傾向にあるとのことだ。

同社は総合ARPU収入の最大化に向け、さらなる顧客基盤の拡大と付加価値の創出に向けた取り組みを推進する。通信の顧客接点をベースに付加価値を創出することで、収入増とリテンションの向上を狙う。その戦略強化の一環として、ローソン連携の本格始動や、新たな料金プランの展開などを実施する。

  • ARPU収入が拡大した

    ARPU収入が拡大した

合わせて、ネットワークの強化も図るという。同社が強みとする近接した2つのSub6周波数と、それに対応するMassive MIMOを組み合わせ、キャリアアグリゲーションによって快適な5G通信を提供する。また、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」とスマホの直接通信サービスを年内をめどに提供開始予定だ。

  • つながるネットワーク体験を強化する

    つながるネットワーク体験を強化する

付加価値領域の顧客基盤は、通信とのシナジーによって拡大しているそうだ。金融事業ではauじぶん銀行の預金口座数が前年比で94万増の639万口座、au PAYゴールドカード会員数は41万増となる138万人。エネルギー事業ではauでんきの契約数が3万増加して353万となった。

  • 金融 / エネルギー事業も堅調に拡大

    金融 / エネルギー事業も堅調に拡大

ローソンとの連携も着実に進んでいる。「Real×Tech Convenience」のコンセプトの下で新しいコンビニ体験を生み出し、データやAIを活用したDXによってローソンの成長を支援するという。2030年度までに店舗オペレーションを30%削減するとしている。

今後、KDDIはローソンを社会課題解決のための拠点として活用する方針だ。公共サービスの維持や防災拠点としての運用などによって、地域に貢献するという。防災については、ローソン店舗の地域防災拠点化の検討に向けた連携協定を石川県と締結した。これにより、ローソン店舗へのドローンポートやStarlinkアンテナの設置を進める。

  • ローソンを拠点とした社会課題解決を目指す

    ローソンを拠点とした社会課題解決を目指す

ビジネスセグメントは高利益率の事業で成長

ビジネスセグメントでは、売上高が前年同期比で13.1%増となる6724憶円、営業利益が11.1%増となる1137憶円で、増収増益。グロース領域が29.5%の成長となり、全体の進捗を後押しした。

  • グロース領域が特に成長した

    グロース領域が特に成長した

グロース領域では、特にIoTやデータセンターといった高利益率の事業が好調だった。IoT関連サービスは累計回線数が4633万回線まで増加し、売上高は790憶円。同社は2026年度3月期までに売上高2000憶円を目指すとしている。一方のデータセンターは生成AI需要の高まりなどを受け、売上高は650憶円となった。

  • 高利益率の事業が好調だという

    高利益率の事業が好調だという

経営基盤を強化、1対2の株式分割も

KDDIは経営基盤を強化するべく、人材ファースト企業への変革として、KDDI版ジョブ型人事制度を導入している。その結果、キャリア採用が10年間で約10倍に増加したほか、プロ人材の比率が約40%に向上、40歳未満の若手経営基幹職が3年間で約3倍に増加した。

また、持続的な成長に向けた資本政策として、個人投資家の拡大を目的とした株式分割を実施する。分割比率は1対2。さらに、1000憶円を上限とする市場買付けによる追加の自己株式取得を実施する。これにより、取得総額の上限は4000憶円となる。

  • 個人投資家の拡大を狙う

    個人投資家の拡大を狙う

CEO髙橋氏がNTT法について言及

決算会見の終盤、髙橋氏がNTT法について同社の考えを説明した。

「これまでの総務省審議会による議論の取りまとめの方向性については、基本的に賛同している。電電公社の民営化とともに誕生したNTT法は時代の変化に即したアップデートが必要であり、緩和する部分と強化する部分について丁寧に議論が行われ、その方向性が明確になったものと理解している。議論の結論としては、現在の法体系をあえて変更する、つまりNTT法を廃止する論拠は見当たらないものと認識している。この点については、法律の専門家である有識者の先生からも同様の見解が示されている」(髙橋氏)

  • NTT法に関する考え

    NTT法に関する考え