富士通と森永乳業は10月30日、環境変化や社会情勢などに起因する原材料の価格変動や為替変動が事業損益や経営に与える影響について、さまざまな状況を想定したシミュレーションが可能な意思決定基盤を共同開発したことを発表した。同システムは8月5日から森永乳業で運用を開始している。

システム開発においては、富士通の食品業界などへのプランニング業務高度化に関する導入実績と、計画立案や分析に特化したオファリング「Fujitsu Manufacturing Supply Chain Planning」を活用している。

  • 構築したシステムの概要図

    構築したシステムの概要図

システム開発の背景

昨今の食品製造業界では、気候変動や自然災害、グローバル規模での需給や為替変動による原材料価格の高騰など、さまざまな影響を強く受けている。森永乳業はこうした激しい変化に立ち向かうため、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを進め、経営基盤の一層の強化を目指してきた。

その一環として「社内外に散在している情報を集約したい」「シミュレーションの属人化を解消したい」といった課題を持つ森永乳業と、サプライチェーン全体のプランニング業務高度化に対する実績と経験を持つ富士通は、経営に与える影響を早期に把握しシミュレーションできる基盤の共同開発を開始した。

これまで森永乳業では、国内23の工場で取り扱う数百以上の取引先情報および製品情報を、人手で複数組織にまたがり集計していたという。この作業を効率化し、原材料の価格変動などの経営に対する影響を早期に可視化することで、意思決定の迅速化を貢献する。

開発したシステムの概要

「Fujitsu Manufacturing Supply Chain Planning」は、富士通が蓄積したノウハウを活用したプランニング・シミュレーション基盤。同社がさまざまな業種・業務向けにシステムを提供する中で培った業務プロセス・データ・アルゴリズム・商慣習・システムアーキテクチャに関する理解や経験に基づいて構築しているという。

今回、森永乳業向けに提供したシステムでは、原材料価格の変動による損益への影響の分析と把握にかかる時間を削減し、変化への対応力を高めた。さらに、多様な状況を考慮したシミュレーション機能により、将来的な拡張にも対応する販売・調達計画の立案などの高度な業務へのシフトを支援し、コストの最適化に貢献するとのことだ。