NECは10月29日、オンラインで2024年度第2四半期決算説明会を開催した。説明会では、同社 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏により、第1四半期~第2四半期を含めた上期の業績が発表された。
増収増益と好調な業績
上期の売上収益(日本航空電子工業(JAE)の非連結化の影響を除く)は前年度比3.5%増の1兆4867億円、Non-GAAP営業利益(同)は同252億円増の648億円、調整後営業利益は同33.2%増の610億円となった。
森田氏は「前年度比で増収増益となり、上期実績は当社の想定線であり、年間予算の達成に向けて順調に進捗している。セグメント別もITサービス、社会インフラともに増収増益となり、その他はJAEの非連結化により減収減益となった」と述べた。
セグメント別ではITサービスの上期における売上収益は前年度比5.6%増の8906億円となり、国内外ともに増収。調整後営業利益は国内の売上増加に伴う利益増と、海外でのAvaloqを中心とした利益改善により増益となった。
第2四半期における国内ITサービスの受注動向は前年同期比17%増、領域ごとではパブリックが同38%増と大型案件や自治体標準化案件により大幅に増加し、大型案件を除いても10%増となった。また、エンタープライズは同2%増、業種別では金融が同11%減となったものの、前年度の大型案件を除くと増加となり、好調を維持。製造はDX(デジタルトランスフォーメーション)案件の増加で同11%増、流通・サービスは大型案件により14%増、その他は同15%増となっている。
森田氏は「足元での受注環境は第1四半期から継続して好調であり、年間目標の達成に向けて着実に案件を積み重ねている」と話す。
海外(DG/DF:デジタルガバメント/デジタルファイナンス)では、欧州3社における上期までの売上計上分と獲得済み受注案件のうち、2024年度に売り上げとして計上予定の金額から年間売上計画に対する進捗としては、前年度の第2四半期末時点の進捗度は87%だったが今年度は89%となり、年間売上計画を達成可能な状況となっている。
社会インフラの上期における売上収益は前年度比2.1%減の3570億円となった。テレコムサービスの売上収益はワイヤレス事業の非連結化とグローバル5Gで減収となったが、調整後営業利益は開発費やリソースシフトなどを含む費用効率化により改善した。
また、ANS(Aerospace and National Security:航空宇宙および国家安全保障)は獲得済みの案件を着実に遂行して増収増益となり、案件の受注も順調に推移しており、上期までに獲得した案件で売上計画が達成できる水準まで積み上げているという。
なお、全社の2024年度の売上収益は10月にIR Dayで公表した前年度比3.1%減の3兆3700億円に変更はない。
NECネッツエスアイをTOB、その思惑は?
一方、会見当日の10月29日には上場子会社であるNECネッツエスアイの株式に対する公開買付け(TOB)を開始すると発表。これは、NECネッツエスアイを完全子会社化したうえで、事業再編を行い、NECグループ内に分散している関連リソースを統合し、全国の自治体やSME(中堅・中小企業)向けビジネスを強化していくことが目的だ。
具体的には、NECネッツエスアイのネットワークソリューションやICTインフラの工事・保守、全国対応の強みと、NECネクサソリューションズの東名阪エリアで自治体・SME向けITサービス、業種ノウハウ、アプリケーションに関する強みを統合。
これに加え、NEC本体のリソースも統合し、最適化を図ることで全国の自治体・SMEに対してIT・ネットワークを統合したDXソリューションをコンサルティングからSI、工事、保守まで一気通貫で提供可能な事業体制を構築する。
森田氏は「デジタル田園都市国家構想の中で自治体のデジタル化が加速するとともに、中堅・中小においてもDXの取り組みが本格化していくことが見込まれている。工事を含めてエンドツーエンドに対応できるSIerというユニークな強みを活かし、DXを契機としたITサービス、それを支えるネットワークへの需要増大をとらえたいと考えている」と期待を口にした。
買付期間は10月31日~12月11日までとなり、買付価格は普通株式1株につき3250円、買い付け予定数は7246万1155株、買付代金は2355億円を見込んでいる。事業再編はNECネッツエスアイの完全子会社化後に新設予定の中間持株会社「NESICホールディングス(仮称)」傘下に同社とNECネクサソリューションズを配置し、NECの消防防災事業をNECネッツエスアイに、自治体・SME向けITサービス事業をNECネクサソリューションズにそれぞれ承継する。
そのほか、同社のDX事業における価値創造モデル「BluStellar」の受注は前年度比40%増となり、エンタープライズだけでなくパブリックの大型案件も獲得し、先行するエンタープライズに加え、パブリック向けにも業種に特化した価値創造シナリオの拡充を予定しており、AIやセキュリティ商材を活用した高収益案件も拡充する。
また、9月には生成AIと音声認識を搭載したコンタクトセンター向けプラットフォームの提供を開始したほか、生成AIを安全・安心に活用するためハルシネーション対策機能を10月に提供開始している。