グッド・オールド・デイズ
ソフトウェアには「イースターエッグ」と呼ばれる機能が実装されることがある。これは開発者がプログラム内部に隠しておく秘密のメッセージや機能で、通常、これらはユーザーが意図的に特定の操作を行うことで初めて発見できるように設計されている。開発者の遊び心やユーモアを反映するものだ。
このイースターエッグは、プログラム本来の機能には直接関係ないため、見つけることが一種の楽しみとされる。
イースターエッグの由来は、1970年代から1980年代にかけてのソフトウェア開発の文化にある。当時、多くの開発者は大規模なプロジェクトにおいて個人の名前がクレジットされることがなかった。そのため、開発者たちは自分たちの名前やメッセージをこっそりとプログラムに埋め込むことによって、自分たちの存在をユーザーに知らせた。
これがイースターエッグの始まりと考えられており、次第にゲームやオフィスソフトウェアなどさまざまな製品に取り入れられていった。
Windows 11に「イースターエッグ」が少ない理由
しかし近年は、セキュリティと信頼性の観点から、イースターエッグが減っている。Windowsにも歴史的にイースターエッグが仕込まれてきたが、現在ではその存在を確認することはかなり困難になっている。例えば、Windows 11にイースターエッグが少ない要因として、以下が考えられる。
セキュリティの向上と信頼性の重視
昔は、イースターエッグは開発者の遊び心やユーモアを表現する要素として人気があったが、近年のセキュリティ意識の高まりに伴いソフトウェア内に意図しない動作を含むことがリスクと捉えられることが多くなっている。
特にWindowsのようなオペレーティングシステムでは信頼性とセキュリティが最も重要になる。このため、Microsoftは不正な動作や予期しない挙動が起こり得る要素を排除する方針を取っていると考えられる。
企業イメージの変化
MicrosoftはWindows 11においてエンタープライズ環境での利用を重視している。このような環境では、イースターエッグが含まれていることが「プロフェッショナルではない」と受け取られる可能性があり、信頼性や整合性を損なうリスクがある。そのため、企業イメージを保つためにも、このような遊び心のある要素を取り入れない方針が取られていると見られる。
開発者文化の変化
昨今、開発者の働き方や企業の文化が変化している。かつての小規模で自由度の高いプロジェクトとは異なり、現在の大規模なプロジェクトでは、コードの透明性や厳格なレビューが求められる。このような環境ではイースターエッグのような非公式な要素をコードに含めることは難しくなっている
こうした理由からWindows 11においてはイースターエッグが見られない、あるいはきわめて少ないと考えられる。
イースターエッグ的なモノなら見つけられないこともない
企業利用においてイースターエッグが不要であることは間違いがなく、ないことはむしろ歓迎すべきだ。しかし、疲れ切ったときに知っているイースターエッグを表示させて「フフッ」っと息を抜くこともできないのは、ちょっとばかり悲しい感じもする。ソフトウェアが厳密に設計され実装されていることは喜ばしいが、人間は常に張り詰めているようにはできていないのだ。
とはいえ、今のWindows 11にも「イースターエッグ的なモノ」が、少ないながらも存在している。もはや公式ドキュメントに載っているものではあるのだが、イースターエッグの雰囲気は味わえる。
今回はそんなちょっとした機能を取り上げるので、疲れたときにでも試してもらえればと思う。
昔なつかし「クリッピー」に出会う
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、MicrosoftはMicrosoft Officeのユーザー支援ツールとしてキャラクター「クリッピー(Clippy)」を展開していた。擬人化された紙クリップのキャラクターで、比較的豊富なアニメーションを用いて表情も表現されていた。ユーザーが行いたい操作に応じて支援を提供するために作られた仮想アシスタントだ。
クリッピーはMicrosoft Office 97からOffice 2003まで仕事をした。クリッピーに対する反応は賛否両論だ。役立つとするユーザーがいる一方で、煩わしいとして不評の声も多かった。企業利用では生産性を損なうとして、次第に出番は減少し、最終的に廃止された。
当時の評判はどうあれ、懐かしいキャラクターではある。このクリッピー、実はMicrosoftが2021年に絵文字としてひっそり復活させているのだ。
クリッピーに会う方法は簡単だ。「Win」+「.」で絵文字パネルを表示させ、「紙クリップ」で検索する。そこには懐かしいクリッピーの姿が見つかるはずだ。
クリッピーの支援機能は事前にプログラムされたものであり、Cortanaのようなことはできない。ましてやCopilotのようなやり取りは不可能だ。クリッピーは単なるアシスタントとしてではなく、その独特なキャラクター性で多くの人々に思い出深い存在となった。現在ではノスタルジックな面から懐かしむ対象だ。
ネットがつながらないならサーフィンはいかが?
Webブラウザはインターネット接続が失われたときに特定のページを表示することがある。中には、ネットワークが復旧するまでゲームでもしてはいかがかといわんばかりにゲームを表示するものもある。
Windows 11のデフォルトWebブラウザであるMicrosoft Edgeにもこうした機能がある。アドレスバーに「edge://surf」と入力すると、サーフィンゲームを楽しむことができる。
ネットサーフィンができないなら、サーフィンのゲームをすればよいじゃないか、ということだ。