琉球大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)は10月25日、JAMSTECが2020年12月に実施した無人探査機「KM-ROV」を用いた調査航海において、日本南部の西マリアナ海嶺「沖合海底自然環境保全地域」の水深約525mの海山で、大型で寿命が長いことが知られている黒珊瑚のツノサンゴ類「Leiopathes cf.annosa属」の群体を発見し、幅約441cm・高さ約308cm・基部の直径約28cmという大きさと成長速度の関係から年齢が約7000年と推定されたことを発表した。
同成果は、JAMSTECが実施した環境省からの委託事業「令和2年度沖合海底自然環境保全地域調査等業務」による成果で、琉球大 理学部 海洋自然科学科生物系のジェイムズ・デイビス・ライマー教授、JAMSTECの藤原義弘上席研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、海洋生態系における生物多様性に関する全般を扱う学術誌「Marine Biodiversity」に掲載された。
2020年に制定された沖合海底自然環境保全地域のうち、西マリアナ海嶺・中マリアナ海嶺北部海域には多数の海山(孤立した海中の円錐形の形状をした山)が存在し、多様な海洋生物が集まる重要な生態系の拠点として知られる。特に、ツノサンゴ類を含む大型の刺胞動物は、生物多様性の高いベントス(底生生物)群集の基盤を形成し、深海の「海洋動物の森」として知られている。しかし、これらの生物の多様性はまだ十分に把握されておらず、そして保護が不十分であり、持続可能な資源利用の観点からも、さらなる研究と保全が求められていたという。
そうした中、JAMSTECが海底広域研究船「かいめい」とその搭載機器である無人探査機「KM-ROV」を用いて、2020年12月に沖合海底自然環境保全地域の西マリアナ海嶺を調査航海を実施。その結果、水深約525mの海山において、幅約441cm・高さ約308cm・基部の直径約28cmという、通常の数倍のサイズを持つツノサンゴ類の一種であるLeiopathes cf.annosaの巨大な群体が発見された。
過去の研究から、Leiopathes cf.annosa属の成長速度は1年間に0.02mmと非常にゆっくりであることが推定されており、それを基に計算すると、今回の確認されたサイズまで成長するにはおよそ7000年が必要になることが導き出されたことから、この群体が、地球上で最も長寿の海洋生物の1つである可能性が示されたという。