デル・テクノロジーズ(以下、デル)はこのほど、脱炭素社会と循環経済の促進に関する取り組みについて、記者向けに勉強会を開催した。デルのサステナビリティに関する具体的な取り組みは2010年ころに始まったそうだ。
その後、サステナビリティの取り組みは2015年にパリ協定の目標達成に向けて設計され、SBTi(Science Based Target initiative)によって承認されたGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)削減目標を設定する最初の12社のうちの1社となっている。勉強会では、同社が持続可能な未来に向けて設定する目標値と、これに対する具体的な進捗が紹介された。
サステナビリティのために再エネ100%使用を目指す
デルでESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンスの頭文字を取ったもの)領域を担当する松本笑美氏はまず、デルが実施した調査の結果から、企業のサステナビリティに関する優先項目を紹介した。
調査結果によると、サステナビリティに関する優先項目を設けている企業の割合は97%にも上る。具体的な項目としては、「テクノロジー / AI / 機械学習 / データサイエンスを活用してサステナビリティの取り組みに情報を提供、最適化する」(47%)の回答が最も多かったという。
「サステナビリティにおける適切なガバナンスを確立する」(44%)、「廃棄物を最小限に抑え、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に貢献する」(41%)、「よりサステナブルな商品を調達・活用する(再生材、リサイクル可能な梱包材の使用など)」(40%)、「環境・社会・ガバナンス(ESG)レポートとコンプライアンスの向上」(39%)といった回答が続く。多くの企業がサステナビリティを優先項目として、具体的な施策に取り組んでいることが分かる。
デルが掲げる気候変動への対応目標 - 2040年までに再エネ100%
そうした中で、デルは2050年までにスコープ1~3全体でGHG排出量のネットゼロ(実質ゼロ)を目標として掲げている。なお、スコープ1とは自社での燃料や製造プロセスにおける直接的なGHG排出を指す。同様に、スコープ2は自社が使用する燃料や電気エネルギーに伴うGHG排出を、スコープ3は原料調達から物流などサプライチェーン全体のGHG排出をそれぞれ意味する。
同社は2011年と比較して、2020年までにスコープ1と2の38%削減を達成しているという。さらには、2030年までに2020年と比較して50%削減の達成を目指しているとのことだ。また、スコープ2に関しては、2040年までに再生可能エネルギーの使用率を100%する。なお、その前に2030年に75%の使用率を目指す。
スコープ3においては、カテゴリ1である購入した商品とサービスから発生する排出絶対量の削減に対し、サプライヤーとの協力によりGHG排出を2030年までに45%削減する。カテゴリ11である販売した製品の使用に伴う排出量は、ユーザー企業と連携して30%削減するとのことだ。
補足となるが、スコープ3はカテゴリ1~15に分類される。カテゴリ1は自社が購入した製品・サービスに伴う排出、カテゴリ4は調達物流や輸送に伴う排出、カテゴリ6は従業員の出張に伴う航空や鉄道利用による排出、カテゴリ9は倉庫での保管や小売店の販売など下流工程による排出、カテゴリ11は製品利用者による排出、といった具合だ。IT機器の製造業であるデルにおいては、スコープ3の中で特にカテゴリ1と11によるGHG排出が大部分を占めるため、まずはこの領域に重点的に取り組む。
サステナビリティ目標に対する進捗は?
松本氏は続けて、上記の目標に対する進捗を紹介した。2030年までのスコープ1と2の50%削減目標に対して、2024年時点では40.6%達成。太陽光パネルの導入をはじめ再生可能エネルギーの利用により、堅調に進捗しているという。
スコープ2の再生可能エネルギーの使用率100%に関して2024年時点では61.5%達成と、こちらも2030年の75%達成に向けて堅調に進んでいる。
「当社は2030年に75%達成して満足するのではなく、その先の2040年に100%達成を見据えているので、気を緩めることなく引き続き対応していく」(松本氏)
スコープ3カテゴリ1の、購入した商品とサービスから発生する排出量は、2023年度で約1823万メガトン。現在は2020年度をベースラインとして累積的に毎年のデータを比較できるよう準備している段階とのことだ。具体的な進捗は今後発表される予定。
スコープ3カテゴリ11の、デルが販売した製品の使用に伴う排出30%削減に対して、2024年の実績は22.2%。「お客様が購入した機器はお客様が管理するものであり、使い方を強制するわけにはいかないので、ここのGHG削減が最も難しい。一方で、お客様も気候変動への関心が高まっているのでユーザーの声を聞きながら製品開発などに活用している」と、松本氏は解説していた。
循環型経済に資するための製品デザインにも注力
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、原材料の採集や採掘に始まり、使用、廃棄までの従来型の一方通行の線形な工程に対して、廃棄物の削減を目的として再利用や再生可能な材料を取り入れた製品を利用する工程を指す。分解・修理しやすい製品の開発や、そもそも製造過程で発生する廃棄物の量を減らすための取り組みなども含まれる。
デルが掲げる循環型経済への対応目標 - 2030年までにリサイクル素材50%超使用
デルはサーキュラーエコノミーに資する目標として、2030年までにユーザーが購入した製品1メートルトン(1000キログラム)につき同量を再利用、またはリサイクルする目標を掲げる。
また、2030年までに梱包材の100%をリサイクル素材または再生可能な素材から再生、もしくは、再利用梱包材を使用するとしている。同じく、製品内容の50%以上をリサイクル素材、または再生可能な素材や炭素排出量の少ない素材から作るとしている。
循環型経済目標に対する進捗は?
これらのサーキュラーエコノミーに関する目標値に対して、2024年時点ではユーザーが購入した製品と比較して30.1%の再利用を実現している。現在は製品に使用するパーツの汎用化や少数化にも取り組んでおり、わずか数パーツのみで組み上げるPCのプロトタイプなども開発中だという。
梱包材の利用では、2024年時点で96.4%がリサイクル素材または再利用可能な梱包材を使用している。ビニールなどは使用せず大部分は紙素材を使用しているが、最低限必要な一部にプラスチックの梱包材を使っているという。サーバやストレージなどのインフラ機器においては、梱包し製品を届けた後に梱包材のみデルが回収するようなサービスも手掛けている。
製品内容の50%以上をリサイクル・再生可能な素材で作るという目標に対し、2024年時点の進捗は14.1%。日本では廃棄物処理法などの規制によって、回収したIT機器はメーカーを問わずに再販が可能である一方で、リサイクル時には自社製品を含む割合が定められるなど、一定のハードルが残されているとのことだ。