ZOZOは10月15日、同社が提供する3次元計測用のボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」がなくても、身体計測できる事業者向けの業務効率化サービス「ZOZOMETRY(ゾゾメトリー)」の提供を開始すると発表した。
「ZOZOSUIT」なしで計測できる仕組み
ZOZOMETRYでは、専用のスマートフォンアプリを使って身体をスキャンすると3Dデータが生成され、独自AIが身体の計測数値を算出する。最大で身体の139カ所を約1分で計測でき、身体データは管理ツールに自動的に連携され、一元管理が可能だ。
事業者は大規模な設備投資やシステム開発が不要で、アカウントの申込みだけで導入できる。計測者に特別なトレーニングは不要で、スマートフォンのカメラを用いて場所を選ばずにどこでも計測できる。
TECH+の取材に応じたZOZO 新事業創造本部 新事業推進部 ディレクターの家田敢氏は「通常の採寸には高度な技術と知識が欠かせないが、ZOZOMETRYを使えばだれでも手軽に高精度な計測ができる。事業者の人手不足や計測者ごとの計測結果のばらつきの解消につなげ、採寸が必要な服の売上拡大やコスト削減を支援する」と新サービスの狙いを語った。
ZOZOMETRYでは、ZOZOSUITを着用して行う身体計測方法も提供する。ZOZOSUITを着用せずに計測する場合は、身体のラインがわかる服を着用する必要がある。いずれも計測精度は高く、平均誤差はZOZOSUIT着用の場合で3.7mm以下、ZOZOSUITなしで10mm以下だという。
採寸の時間が「1時間」から「1分」へ
すでにオーダー服や衣料品の研究開発や教育といった分野で導入が決定している。オートバイ用レーシングスーツをオーダーメイドで製作する南海部品はZOZOMETRYを先行的に導入している企業の一社だ。
同社が販売するレーシングスーツは1着あたり数十万円するほど高価なものだ。約30~40カ所の身体部位を計測する必要があり、慣れていないスタッフだと採寸に1時間ほどかかる。熟練したスタッフがミスなくスムーズに行ったとしても15分~30分かかるという。
ZOZOMETRYを導入してからは、採寸が約1分で完了するようになり、計測者によるばらつきもなくなった。工場による作り直しも大幅に減ったという。南部部品は今後、同サービスの導入店舗を順次拡大していく考えだ。
他にも、慶應義塾大学 理工学部 鳴海研究室では、ZOZOMETRYを活用して、一人ひとりの体型にあった服の研究開発を進めている。文化ファッション大学院大学も同サービスを導入し、教育の現場で活用している。
医療分野でも広がる「ZOZOSUIT」の可能性
ZOZOは2017年に採寸用ボディースーツとしてZOZOSUITを発表しプライベートブランドを展開してきた(2017年発表のZOZOSUITは、現在はサービス終了)。そして2020年10月に、基本的な計測方法をそのままに、より精緻な身体の3Dモデル生成を可能とした3D計測用ボディースーツとしてZOZOSUITを新たに発表(当時は「ZOZOSUIT 2」として発表したが、現在はZOZOSUITに名称変更)。
2022年8月には、ZOZOSUITの技術を活用した新事業を米国で提供開始。日本国内においてもさまざまな企業や団体と取り組み進めている。
東京大学との共同研究では、ZOZOSUITを活用して、背骨がねじれ曲がる病気「側彎(そくわん)症」の検知に成功した。がん研究会有明病院との共同研究では、がんの治療後に起きる「リンパ浮腫」と呼ばれる手足のむくみの程度がZOZOSUITを使うことで精度良く測れることが分かった。
家田氏は「ファッション業界だけでなく、さまざまな業界で活用できるサービスだ。まずは身体計測を中心したサービスとなるが、そのデータを使った診断機能や身体以外の計測など、ZOZOが持っている技術を掛け合わせて発展させていきたい」と展望を示した。