【グループ入りの背景を聞く】Tsuzucle 森祐太社長「伴走型PM支援で強力なマーケ推進」

デジタルマーケティングやコンサルティング、EC開発などのTsuzucle(ツヅクル)は今年7月、EC事業やブランドのM&Aを手掛けるforest(フォレスト)と資本提携し、forestのグループ企業になった。ツヅクルは東京大学発のスタートアップ企業で20年6月に創業。4年の間に、大手通販やEC、リテール企業など手掛けた支援は約100社。部署を横断した事業目標に基づくKPI設計やモニタリング、マーケティング施策の連動をツヅクルがPM(プロジェクト・マネージャー)として担い、顧客から評価を得ている。フォレストグループ入りの狙いなどについて、森祐太社長に聞いた。

<役割りはCMO>

――ツヅクルの事業内容は? 

当社は、東京大学在学中に同級生と立ち上げたテイクアウトのサイトが始まり。テイクアウトサイトは軌道に乗り、2000万円ほど売り上げた。この実績が評価され、他社から引き合いが増えた。

 

ただ、テイクアウトなどだけでは競合が多すぎるため、SNS支援に特化するようになった。当時、SNS界隈ではインフルエンサーの需要が急速に拡大し、インフルエンサーマーケを行う会社が一気に増えた。

 

しかし、当社がこのインフルエンサーマーケを行ってもバリューが出せないと早々に見切りをつけて、投稿管理などを行うSNS運用を手堅く進めてきた。

 

進めていく中で、フォロワー数の増加を単純なKPIとするのではなく、フォロワー数の増加が売り上げ、またはマーケにどのように紐づくかをKPIとして支援を重ねてきた。当時、こうした観点で支援を行う企業が少なかった。

 

KPIの一環として、データを可視化するレポーティングなどを他社との差別化にした。

 

支援を横断的な視点で捉えて本質的な課題解決に直結させるために、「線」でサポートしていくようになった。結果、今の当社の支援は、CMO(最高マーケティング責任者)的な立ち回りが多い。

 

顧客から、課題をもらってもそのオーダーがはたして企業のためになるのか、と一緒になって必ず考える。顧客によっては、課題が点だけでは解決しない場合もあるためだ。

 

競合などに勝っていくためには、根本的な課題解決の分析、社内のコミュニケーションを図りながら進行していく必要がある。顧客のPMになることが1つの武器になっている。

<先を見据えた設計>

――開発事業はECがメインで、バックエンドのつなぎ込みが強みと聞く。

当社が事業として展開する開発は、PMで培ってきた知見を生かし、ECサイト構築サービス「Shopify(ショッピファイ)」に特化した事業となる。

 

PMの視点で入るため、大半がフルカスタマイズ。開発におけるシステム投資は、利便性や効率性も重要だが、投資した分を回収していく計画性も必要だ。

 

例えば、店舗を展開していた会社がEC展開を始めるとする。ECサイトだけを開設することは容易だ。しかし、OMOでのマーケ施策や物流の受発注業務、既存のインフラとのつなぎ込みなど、今後の成長を考慮していくと単純なサイト構築だけでは意味がない。

 

先々の投資コストを考慮すると、初期段階から先を見据えた汎用性の高い設計にしておく必要がある。テンプレ構築だけでなく、バックエンドでの開発ができなければECが既存事業から分断される恐れもある。

 

ショッピファイの開発を公に出してからまだ1年強だ。エンジニアのスキルは日本国内でもトップクラスと自信を持てるレベルであり、開発事業の推進強化はこれからだ。

<経験値が必須>

――フォレストと資本提携した背景は?

フォレストとは考え方が似ており、当社に必要なピースを持っていた。ビジネスはM&AとECだが、モデルは事業再生でもある。

 

事業再生の仕組みは、非常にシンプルであり、社員のモチベーションも維持しながら事業を再構築できるメリットがある。

 

当社は創業時から手堅い経営ができていた。VC(ベンチャーキャピタル)などから資金調達もせず、自力で技術やノウハウを学んでここまできた。

 

大手通販やリテール企業を中心に、メーカーや直販、卸、店舗とECの両軸などいろいろな売り方についてマーケやコンサル、開発など100社前後の支援実績を積んできた。

 

市場へのさらなるサービス浸透を考えた時に、今こそ強みを補完し合える企業と一緒になって進めることが最適だと考えた。

 

顧客の多くはBtoC向け事業を展開するが、当社はBtoB事業であり、強化していくためには、知見と実績、そして年齢を含む経験値がどうしても必要だった。

 

この壁にぶつかった時に「自力では難しい。どこかの企業にグループインしてやるしか選択肢はない」との考えに至った。

 

両社の事業シナジーがあるメリット、グループインすることで当社単体でも成長できる可能性が感じられた。組織作りの観点からみても、知見を適用できる良さもあった。

 

フォレスト側から見れば、ECブランドというサイトや製品の強さはあったが、マーケやSNS領域のピースがなかった。

 

今後、フォレストのブランド事業に当社の知見やノウハウを生かした施策を加えて成長をサポートしていく。すでに事業に入って稼働を進めている状況だ。

――今後の計画は?

マーケやコンサル支援、EC構築支援は、国内の競合と比べてクオリティーなどが勝っている自負がある。

 

マーケやコンサル支援は前述した通り、KPIやマーケの可視化を行いながら、根本的な課題解決を実装するPMでの支援を続ける。

 

一方、当社のマーケやコンサル支援は、あくまで顧客のカンフル剤。支援した会社をなるべく内製化させて、自走できるようにするのが役目でもある。契約期間も2~3年と決めて支援を行う。

 

当社が支援した顧客のアップセル率を算出したところ、最新データで37%と向上している。こうした結果が最終的に支援の継続につながっている。

 

しかしながら、当社のサービスが浸透しきれていない。フォレストの事業成長を支えつつも、PR強化と会社の組織拡大を手堅くやっていくつもりだ。

 

エンジニアたちのスキルや生産性の向上を目的に、セミナーや交流会なども定期的に実施している。人材の育成や支援とまではいかないが、できる範囲で人材領域のサポートも対外的に実施していくつもりだ。