代理店との〝もたれ合い〟 損保の情報漏洩の責任は?

企業向け保険のカルテル問題や旧ビッグモーターを巡る保険金不正請求問題に続き、損害保険業界で自動車保険などの加入者情報が保険代理店を通じて他の損害保険会社に大量に漏洩した。損保大手4社によると、漏洩件数は計約250万件。

 代理店に出向した損保社員が親会社に顧客情報を送り、ライバル他社から保険契約を乗り換えさせるための営業活動に使われていたことも判明している。

 金融庁は7月、4社に対して保険業法と個人情報保護法に基づく報告徴求命令を出し、8月中に事実関係や原因、再発防止策を報告するよう求めていた。

 情報漏洩には2つのルートがある。1つは銀行や銀行系の保険代理店を通じたもの。もう1つの漏洩ルートは、自動車保険を扱うディーラーを通じたものだ。損保側の営業担当者はこの情報を契約者への保険の乗り換えの勧誘などに使っていた。

 損保会社は自らが出資するところを含め代理店側に2000人規模の出向者を派遣している。情報漏洩が起きた銀行ルートとディーラールートの双方で共通するのは、代理店側とのもたれ合いの構図。今回の不祥事を受けて、東京海上日動などは出向基準を厳格化する方針を示した。

 今後の最大の焦点は情報漏洩が組織ぐるみだったかどうかだ。漏洩件数が最大だった損保ジャパンは報告書に「出向元である当社への貢献度を人事評価の織り込んでいた実態があった」と記しており、疑いは濃厚。

 保険業法だけでなく、個人情報保護法や不正競争防止法にも抵触する可能性もある事案だけに、金融当局としても中途半端な幕引きはできない状況。損保各社は経営責任の明確化やガバナンス体制の抜本的な立て直しを求められそうだ。

 情報漏洩を巡っては、生命保険業界でも同様に、乗り合い代理店などに出向した社員らを通じて契約者情報が親元に流れていた事案が確認されている。金融庁はこちらの調査も進める構え。「金融行政方針」にも規制強化を盛り込んでおり、保険業法改正を視野にルール整備を急ぐ方針。法令順守はもちろん、代理店に課題を押しつける損保業界の責任が問われる。