トヨタやVWなどが戦略変更へ 米国大統領選やEV不振が響く

米国大統領選や電気自動車(EV)の販売減でメーカーが戦略変更を余儀なくされている。

 米テスラCEOのイーロン・マスク氏はメキシコの新工場建設を休止したと表明。中国EV大手のBYDも新工場建設の計画をストップした。米国第一主義を掲げ、メキシコで生産した製品に高関税をかけると公言する共和党のトランプ前大統領が11月の大統領選で再選する可能性を考慮した形だ。

 貿易ルールを定めた米国・メキシコ・カナダ協定に基づくと、メキシコで生産したEVは一定の条件をクリアすれば無関税で米国に輸出できる。企業は生産コストを抑え、米市場開拓を進められるメリットがある。

 BYDはメキシコで工場建設の候補地の絞り込みを進めていたが、米大統領選の結果が判明するまで計画を一時中止した。しかし、BYDはこうした観測を否定。新工場で生産したEVは米国向けではなく、メキシコ国内で販売すると説明した。

 EVに否定的な意見を持つトランプ氏の返り咲きは、マスク氏には恩恵がないように見える。トランプ氏はバイデン政権が導入したEV支援策の廃止を明言しているが、アナリストは「規模の小さなメーカーが淘汰され、一番メリットを受けるのはテスラだ」と解説する。

 一方でEVの販売数の鈍化は著しい。トヨタ自動車は26年のEVの世界生産台数を100万台程度に縮小する方針。当初の150万台からの下方修正となる。同社のEVの世界販売実績は23年が約10万台、24年は7月までで約8万台にとどまる。需要に合わせた形だ。

 さらに、1937年の創業以来初めてとなる独国内での工場閉鎖の検討を余儀なくされているのがフォルクスワーゲン。販売台数の約3割を占める中国で中国EV勢に劣勢を強いられているからだ。他にもスウェーデンのボルボが30年の全EV化計画を撤回。メルセデス・ベンツも撤回した。

「EVは脱炭素の本命だ」(日系メーカー首脳)。そのEVの市場投入が遅れれば50年までにカーボンニュートラルを実現するという国際的な約束に黄信号が灯る。

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