デロイト トーマツは9月24日、業務目的に応じて大規模言語モデル(LLM)を使い分けて自動処理を行うAIエージェントをさらに強化し、複数のAIエージェントが自律的に連携する「マルチエージェントアプリ」を開発したと発表しました。

  • マルチエージェントアプリの一例(調査業務)

    マルチエージェントアプリの一例(調査業務)

現在、業務効率化を目的にLLMを組み込んだチャット型アプリケーションが多くの企業で利用されているが、複雑な業務になるとプロンプト技術の理解やAIとの長いやり取り、AIの誤りのチェックが必要になるなどの課題が生じている。その解決策として、複数のAIエージェントが自律的に連携してユーザーが細かい指示をしなくても成果物を出力する「マルチエージェント技術」が注目されているが、適切なツールの選択ミス、生成された回答の不正確さ、AIエージェント間の連携ミス等といった技術課題がある。

デロイト トーマツは、これらの課題への対応として「マルチエージェントアプリ」を開発。複数のAIエージェントでプロジェクト体制を模した関係性を構築し、エージェント間をグラフ構造で連携させることで、安定かつ柔軟な業務の自動実行を実現した。

  • マルチエージェントアプリ実行中の様子

    マルチエージェントアプリ実行中の様子

「マルチエージェントアプリ」では、Web情報検索、社内DB検索、プログラミングによるデータの可視化、情報全体を取りまとめた分析、資料作成等、それぞれの役割を持ったエージェントを連携させるほか、タスク計画用のエージェントが他のエージェントの役割を理解し、ユーザーの業務要求を実現するためにどのエージェントに何を実行させるべきかを自動で計画する。さらに、グラフ構造による連携制御を用いて、エージェント間の連携可否や連携の方向性を定義し、適切な処理の連携を確保する。

また、自己修正機能として、レビュー専用のエージェントが他のエージェントの実行結果をチェックし、誤りや不十分な点があった場合にレビューエージェントの指摘に基づき自動的に処理を再実行して出力を改善する。さらに、「Human in the Loop」アプローチにより、AIエージェント側が人に対してチェックポイントを設け、人の指摘や承認を踏まえて処理を継続する仕組みを導入。これらの技術を活用して、ユーザーからの業務要求に基づくタスクを自動的に実行する。

ユーザは操作画面で業務内容を自然言語で入力するだけで、マルチエージェントアプリが内容を理解し、関連するAIエージェントを連携させて結果を出力する。さらに、操作画面上でエージェントの追加やツール、LLMの設定も行える。

なお、マルチエージェントアプリは業界・業種を問わずさまざまな業務で活用でき、調査業務だけでなく、報告書作成やドキュメントレビュー、新商品案検討、提案書ドラフトなどにも活用できるということだ。