ウイングアーク1stは9月19日、主要製品すべてに生成AIを適応し、AIプラットフォーム「dejiren」を新たに提供することを発表した。あわせて、説明会を開催し、生成AIおよびプロダクト戦略を紹介した。
組織業務に役立つ「認識型生成AI」に注力
取締役 執行役員事業統括担当兼CTOの島澤甲氏は、「企業にとって、生成AIは利用と目的のギャップが大きいと考えている。この課題を解決するため、プロダクトを進化させる」と述べた。
生成AIを活用する上で、「プロンプトエンジニアリングが難しい」「生成AIと社内システムをつなげたいがつながらない」という課題とあるという。「会計システムや受発注システムにおいて、入力する時フォーマットが必要だが、生成AIでプロンプトエンジニアリングによって結果が得られてもアウトプットが保証されるとは限らない。これはシステムによって都合が悪い」と、島澤氏は説明した。
こうした課題の解決に向けて、同社では60名ほどのエンジニアが生成AIの技術スタックを開発している。「技術の階層を設計して顧客のニーズに合わせて提供することで、生成AIの業務利用を促進したい。一つのゴールは生成AIをユーザーに意識させないこと」(島澤氏)
同社は生成AIを業務に適用する軸として「生成型ユースケース」「認識型ユースケース」を据えている。前者は、生成AIによってテキスト、映像、音声などを生成し、後者は映像、画像、データを解析する。
島澤氏は、「生成型は組織業務に適合性が高くなく、どちらかというと、個人の仕事をエンハンスすることにつながることが多い。一方、認識型は情報を把握することに特化しており、組織業務に役立つと考えている」として、認識型に注力していると説明した。
さらに、島澤氏は「生成AIを展開するにあたり、デジタルで帳票を扱えることが大事。当社は、生成AIを絡めて会社対会社とのやりとりがシームレスに行えるよう、デジタル帳票基盤を開発している」と述べた。
AIプラットフォーム「dejiren」とは
そして、これまでコミュニケーションプラットフォームとして提供してきた「dejiren(デジレン)」について、AIプラットフォームとして機能を刷新し、LLM(大規模言語モデル)のインタフェースとして提供を開始する。「dejiren」は、同社製品で生成AIを利用する時の中核サービスとして、位置づけられる。
具体的には、同社の各製品から生成AIを使いたい場合、「dejiren」を介して各社の生成AIサービスにアクセスする形となる。
「dejiren」は、外部サービスと連携するためのコネクタを備えており、生成 AIにおけるマルチベンダーおよびマルチモデル連携を実現する。そのため、OCR、画像、音声など各データの処理に最適な生成AIモデルを組み込んだ機能を提供する。
dejiren事業開発部 部長の大畠幸男氏は、「dejiren」について、「最適なモデルと機能をプラットフォームとして提供していきたい。また、アプリケーションとして使ってもらえるようにするので、ハイパーオートメーションの側面を持っているといえる」と説明した。
「dejiren」アプリでは、日報作成、現場の活動記録、経費精算といった業務フローをノーコードで作成できる。加えて、「dejiren」本体だけでなく、生成AIの利用環境や運用メンテナンスも含めた一体型のライセンスの提供も準備しているという。
「dejiren」はさまざまなSaaSと連携を図りながら、データ処理ごと(OCR・画像・音声解析)に最適な生成AIモデルを組み込んだ機能を11月より順次提供が開始される予定。
「SVF」「invoiceAgent」「MotionBoard」「Dr.Sum」に適応
同社の製品のうち、帳票基盤ソリューション「SVF」、電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」、BIダッシュボード「MotionBoard」、データ分析基盤「Dr.Sum」において、生成AIを適応することが発表された。
「SVF」においては、生成AIによる帳票レイアウトの自動生成を可能にする機能が2025年以降に提供される予定。
「invoiceAgent」においては、2025年以降に、生成AI連携により、定型・非定型帳票のOCRが事前の読み取り位置を設定することなく行えるようになる。
「MotionBoard」では、生成AI連携によりグラフ・データからのインサイトを自動生成可能になる機能のプレビュー版が12月に提供される予定。
「Dr.Sum」では、自然言語からSQLクエリやPythonスクリプトを生成する機能のプレビュー版が今年3月に提供された。