独SAP傘下で出張・経費精算システムを手掛けるコンカーは9月17日、経費精算申請後にAIが申請内容を自動でチェックするサービスを2025年春に提供開始すると発表した。申請内容と領収書の内容の整合性や、領収書の画像の使い回しの有無などをAIが自動で判断する。工数を削減するとともに、人の目では見抜けない不正をAIが検知する。
同日の発表会に登壇したコンカー 代表取締役社長の橋本祥生氏は「当社はこれまで、さまざまなサービスの提供を通じて、キャッシュレス、入力レス、ペーパーレス、運用レスを実現してきた。そして、当社のミッション『経費精算のない世界をつくる』の実現に欠かせなかった『承認レス』を新機能によって実現する」と述べた。
新サービスの名称は「Verify」。AIだけでなくコンカー担当者と組み合わせたチェック体制を整え、30種類以上の監査項目を判断する予定。「申請内容と領収書が一致しているか」「規定違反がないか」といったことをAIが自動で検知し、AIで判断できない項目は人の目でチェックする。例えば、市場平均価格との差分検知や、不適切な加盟店の洗い出し、重複した領収書の検知、領収書突合による整合性確認などはAIが自動でチェックする。
ガバナンスの強化につながるだけでなく、チェック工数を削減することで生産性が向上し、不正における経費精算の割合を下げることで被害コストの削減も実現できる。同社の調査によると、新サービスの導入によってチェック工数は半減されるという。
コンカー ソリューション統括本部 ソリューションマーケティング部 部長の舟本憲政氏は「経費精算による不正は個人の道徳的欠陥のみでなく、環境的要因も複合的に影響している。デジタル技術による不正検知の仕組みが必要だ」と、新サービスの重要性を語った。
同社はそのほか、出張事前申請の際の概算金額の見積もりを生成AIが自動算出する「Request Assistant」(2025年アップデート予定)や、ホテルの領収書をインポートすると領収書の情報が自動入力される「ホテル領収書明細化機能」(2025年アップデート予定)といった新機能も発表。入力レスをAIによってさらに強化する。
また、SAPの対話型AI「Joule」が2025年内にコンカーにも実装され、個人の趣味嗜好に沿ったフライトを提案する「Co-Pilot Jouleによる出張手配機能」も搭載される予定だ。そして2024年冬以降には、実際の解決手順を生成AIがリアルタイムに作成し、管理者の負担を今まで以上に軽減する「AI管理者サポート」がリリースされる。
「AIはビックデータを活用して初めて成果を上げる技術だ。コンカーは全世界で利用されている経費精算領域のソリューションとして30年以上の歴史があり、飛行機の予約データは年間約3000万件、2023年は10億件以上の経費明細を処理してきた。全世界で経費に関するデータを一番多く持っている。そういったデータを活用して、全く新しい顧客体験を提供していく」(橋本氏)