【株価はどう動く?】上昇第2波に必要な新たな材料、自民党総裁選も株価を左右

ダブルボトムが入り株価が戻る?

 今の株価の動きを相場の波動から解説すると、前回指摘したように、2024年8月5日の暴落でつけた3万1156円で、昨年の安値10月4日の3万487円の一番底から、今年7月11日の高値4万2426円まで上げた分が全て帳消しになり、ダブルボトムが入りました。ダブルボトムが入ったので、8月中は株価が戻っています。

 今年は7月11日が一番の高値ですが、8月5日の安値まで1万1270円下げました。この半値戻しが3万7000円近辺ですが、8月30日現在は3万8580円台をつけて、半値戻しの壁を乗り越えつつあるなど、株価が戻ってきそうです。再び4万円に接近、あるいは4万円に乗せてくる可能性もあります。

 短期波動では、8月5日の安値は一番底ですから、株価が戻った後、二番底をつける可能性があります。4万円近辺まで戻った後、下げるかどうか。あるいは7月高値を奪回するかどうかを見極める必要があります。

 株価が今、7月に天井をつけた後に揉み合っているのは、前回指摘したように、ここが天井だと思う市場参加者が多いからです。専門家の中には「今はバブルのピーク」、「新NISA(少額投資非課税制度)をやるべきではない」などと説く人もいるくらいです。ですから当面、4万円を壁にせめぎ合いが続くと思います。

 次の上昇相場に移る場合の一番の問題点は、昨年4月から始まった「脱デフレ・資産インフレ相場」が今後も中心となって株価を押し上げていくのかどうかです。

 相場を牽引してきたバリュー株の底上げは、ある程度7合目、8合目まで来た感がありますから、次の株価上昇のためには新たなエンジンが必要です。

 その候補となるのは「技術革新」です。脱デフレ・資産インフレで上がってきた相場は今、上昇第2波に入っていますが、足元は休憩となる局面です。ただ、調整が終わった後も上昇は続くと見ます。

 しかし、今のところ第2波は、第1波ほどの迫力はありません。第1波を牽引したバリュー株は、かなりの水準まで上昇してしまったからです。新たなエンジンが必要だというのは、以上のことが理由です。

 そのためには東証グロース市場に上場しているようなハイテク株が出てくる必要があります。すでに、その兆候は出てきています。グロース指数もかなり戻ってきており、最近の高値は7月18日の697ポイント近辺でしたが、8月27日には680ポイントをつけて、暴落前の高値を回復しています。グロース株にマネーが入ってきていることの表れです。

 ですから次の相場は、バリュー株、グロース株、共に上昇する展開になるかどうかが、大きなポイントになります。

 今の相場は下が3万5000円、上が4万円のゾーンで動いていますが、年末に向かって下は4万円、上は4万5000円というゾーンに入っていくことができるかどうか。これはバリューもグロースも上がるという展開にならなければ難しい。

 グロースが上がらない展開ならば、一時的に7月11日の4万2426円を奪回したとしても、そこから先、さらに上昇するというような展開は難しいのです。

 その意味で、バリューもグロースも業績を見たいと思います。バリュー株は海運、鉄鋼、商社などは軒並み好業績ですし、インフレの関係で不動産、建設もよくなってきています。問題は日本のハイテクです。半導体関連は一時上がっていましたが、今はまた下落に転じています。

 楽観シナリオでは、バリューもグロースも共に上昇し、年後半には4万円買い、4万5000円売りというゾーンに入っていきます。中立シナリオでは今の3万5000円、4万円のゾーンで揉み合って、7月高値近辺までしか上がらないという展開が予想されます。悲観シナリオは8月5日の安値を下回る展開ですから、可能性は極めて低いと見ています。

 今後の展開を見極める要素としては、政府がどのような政策を打ってくるかです。安倍政権以来のデジタル革命をどれだけ前進させることができるか。日本にも米エヌビディアのような業績を上げる企業が出てくるためには、国策的にDX、デジタル革命を国がサポートし、前進させる政策が必要です。ですから、次の首相が誰になるかは、非常に重要です。

 永田町筋からの情報では、現在人気ナンバーワンは、小泉進次郎・元環境大臣です。最初の議員投票・党員投票では断トツの票を集めると、その勢いで決選投票でも勝つ可能性が高いと見られています。小泉進次郎首相が誕生した場合に、株価が上がるのか、下がるのかは現時点では読めません。

 大事なのは、誰が首相になるにせよ、政策遂行能力を持っているか、アベノミクス、キシダノミクスを継承するのか、あるいは新しい政策を打ち出すのかが問われます。

 私が考える次期政権に求められることは3つあります。

 第1に、安倍政権以来の課題である「脱デフレ」を確実なものにすることです。日本は物価目標2%を掲げていますから、この適度なインフレに誘導する政策を実行する必要があります。

 そのためには日銀との連携が重要です。急速に利上げをするのではなく、金融緩和スタンスを継続することが大事です。その意味で、金融・経済政策を理解していなければなりません。

 第2に外交です。新たな冷戦構造の中で日本の地政学リスクに直面しています。このリスクに防衛力の強化などで積極的に対応し、西側諸国との連携強化が求められます。外交力が問われるということです。

 第3に教育です。無資源国・日本の「100年の大計」を考えた時、教育の充実と、そのための改革が必要になります。偏差値に偏った教育の是正もやらなければならないでしょう。

 経済、外交、教育で政策を実行する首相が望まれます。現在、出馬が取り沙汰される候補の中では、林芳正・官房長官が条件に最も当てはまると考えますが、果たしてどうでしょうか。