政府は、東京電力ホールディングス(HD)の柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向け本腰を入れる。メンバーを拡充した関係閣僚会議を開催し、地元の理解を得るための対応策を検討する方向で、岸田文雄首相は退陣前に再稼働の道筋を付けたい考えだ。同原発は安全確認の検査を終え、地元自治体の同意を得られるかどうかが焦点になっている。
首相が、脱炭素社会と経済成長の実現を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」で明らかにした。席上、残る任期でGX推進に尽力すると説明し、「その一つが東日本における原発の再稼働の準備だ」と強調した。「地元からの要望を踏まえ、事業者と政府が一体となって対応していかなければならない」と述べた。
原発を巡っては、2011年の東電福島第1原発の事故後に全ての原発が停止し、その後再稼働が進む中でも「依存度を低減する」とされてきた。
岸田政権は一転、原発回帰にかじを切り、建て替えや運転期間の延長の方針を決定した。情報処理の拠点となるデータセンターやデジタル社会の基盤となる半導体工場の新増設で電力需要の急拡大も見込まれ、首相は原発活用の必要性を訴える。
一方、1月に発生した能登半島地震を受け、地元では災害発生時の避難体制に懸念を強めている。柏崎刈羽原発は過去にテロ対策の不備で原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令を受けており、昨年12月に解除されたが、東電に対する不信感も根強い。
花角英世知事は過去に県民に信を問うため、再稼働の是非を争点に知事選を行う可能性にも言及しており、ハードルはなお高い。8月29日の会見では、「県民がどう受け止めるか、柏崎刈羽原発にどう向き合うかが固まっていく」と指摘した。