『鈴廣かまぼこ』、インスタで「かまぼこのある暮らし」拡散 UGCでEC拡充にも活用

「かまぼこ」の老舗ブランド「鈴廣かまぼこ」を展開する鈴廣グループは、「老舗にあって、老舗にあらず」の社是のもと、「かまぼこ」の食文化を守りながらも、時代や消費者の変化に合わせた挑戦を続けている。近年はDXを積極的に推進しており、2019年にECサイトを刷新するとともに、インスタグラムでの情報発信やUGC(ユーザー生成コンテンツ)活用に注力している。「#かまぼこのある暮らし」のハッシュタグが付いた投稿は、約3年間で1000件以上増え、普段の食卓に「かまぼこ」が並ぶシーンを確実に増やしている。ECサイトでも自社の作り込んだ投稿や、顧客の自然体の投稿を掲載し、コンテンツを着実に拡充している。老舗の食品メーカーが挑むSNS活用やECの取り組みについて、鈴廣蒲鉾本店 企画開発部 兼 メディア営業部 部長 松井孝成氏に聞いた。

<社是「老舗にあって、老舗にあらず」を体現>

――鈴廣グループの事業内容は?

1865年に創業し、今年で160年目となります。かまぼこの製造販売が主な事業です。直売店で販売するだけではなく、スーパーなどへの卸売りも行っています。売上高は100億円程度で従業員が約600人おります。

50年周期で事業転換をしており、現在は第3次創業期として本社がある箱根のふもとに直売所や博物館、レストランなどを設けた、かまぼこの複合施設「鈴廣かまぼこの里」も運営しています。「鈴廣かまぼこの里」には年間100万人くらいが訪れており、観光事業も1つの柱となっています。

 

▲「鈴廣かまぼこの里」

社是は「老舗にあって、老舗にあらず」です。創業から159年経つ老舗企業であり、かまぼこは1000年以上続く食文化ですので、製造や食文化については老舗として守っていく姿勢を持っています。

ただ、お客さまのニーズは変わってきています。お客さまのニーズに合わせた接客やサービス、そこにひも付くスタッフの働き方などについても、昔ながらのやり方に捉われず抜本的に変えていくことを推進しています。昨今では、DXの取り組みも推進しています。

――通販やECはいつぐらいから取り組んでいますか?

通販はインターネットが登場する前から手がけています。ECについても取り組み始めたのは早く、1997年くらいから運営していると思います。

2019年には、ECサイトをリニューアルしました。軽減税率など法改正への対応により、カートシステム変更が必要になったことがきっかけでした。 

▲2019年にリニューアルしたECサイト

ただ、カートシステムを変えるだけのリプレイスでは費用対効果が合わないと考え、コンセプトを持ったECサイトに刷新し、攻めの姿勢を持たせたいと考えました。

ECサイトをただの「鈴廣かまぼこオンラインショップ」ではなく「かまぼこのある暮らし 鈴廣オンラインショップ」に改め、「かまぼこのある暮らし」を薦めるオンラインショップというコンセプトにしました。

<ビジュアル訴求できる「インスタ」活用を推進>

――「かまぼこのある暮らし」を広めるために情報発信を強化したのですか?

もともとECサイトの中にブログのようなコンテンツはありました。ただ、シーンを訴求するようなコンテンツではなく、いわゆるSEO記事的なものでした。お中元やお歳暮など需要期にお客さまが検索から流入してもらえるような記事コンテンツをそろえていました。

ECサイトのリニューアルに合わせて、インスタグラムの活用を強化しました。以前からFacebookやX(旧Twitter)の活用はしていましたが、「かまぼこのある暮らし」を広めていくために、ビジュアルで訴求できるインスタグラムの活用を本格化しました。コロナ禍に入り、その取り組みは加速していきました。

「#かまぼこのある暮らし」というハッシュタグを作り、お客さまの声を集める取り組みを始めました。

――「#かまぼこのある暮らし」を展開する狙いは?

「かまぼこ」と聞くとおせち料理をイメージする方が多いと思います。「かまぼこ」という食文化を残していくためにも、おせち料理以外の日常の食卓にかまぼこを並べてほしいという思いがありました。

「#鈴廣」で投稿してくださるお客さまはいましたが、投稿内容の多くは購入した商品についてのものだったり、お正月におせち料理としてご活用いただいているものでした。それ以外の「かまぼこ」についての投稿はほとんどありませんでした。

当社としても日常のかまぼこのある生活を発信できていなかったという反省点がありました。お客さまが、「かまぼこ」をおせち料理以外でどのように食卓に並べていただいているのか、分かりませんでした。

「#かまぼこのある暮らし」というハッシュタグの付いた投稿を当社から発信するとともに、お客さまの発信も促すことで、日常の食卓にかまぼこが並ぶシーンを伝えるとともに、お客さまのかまぼこのある食卓も知ることができます。

ビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo(ビジュモ)」を導入し、それらのコンテンツをECサイトなどに掲載することもできるようにしました。 

▲「#かまぼこのある暮らし」の投稿をECサイトにも掲載

<「#かまぼこのある暮らし」の投稿は1000件超に>

ーーどのように顧客に「#かまぼこのある暮らし」の投稿を促していったのですか?

当初、当たり前ですが、「#かまぼこのある暮らし」というハッシュタグの付いた投稿は0件でした。まずは当社から「かまぼこのある暮らし」のイメージを伝えるような投稿を上げていきました。

レシピの投稿を中心に発信し、お客さまが真似したいと思ってもらえるような投稿を心がけてコンテンツを作成していきました。

「かまぼこのある暮らし」のコラムサイトに投稿したレシピと連動する形で、レシピの作り方をまとめたコンテンツをアーカイブしていきました。 

▲インスタ投稿と連動した「かまぼこレシピ」をサイトで紹介

レシピの投稿でも料理や食卓のスタイリングにはこだわりました。ちょっとおしゃれで「いいな」と思ってもらえるような投稿を目指しています。

日常を切り取っているようで、日常に寄り過ぎず、頑張ったご褒美に食べたくなるというイメージのほどよい感覚のビジュアルを心がけています 

▲ちょっとおしゃれな「かまぼこ」料理を投稿

母の日や敬老の日、誕生日などのイベントに合わせて、ハレの日の食卓に並ぶシーンをイメージした投稿も作っています。イベントだけではなく、給料日やプレゼンがうまくいった日などもハレの日と捉えていいと思っており、そういったシーンをイメージした投稿も作成しています。

――顧客の投稿は増えましたか?

やはりおせち需要が一番大きいので、おせちに関する「#かまぼこのある暮らし」の投稿が増えました。

直近では、「スライムかまぼこ」という人気ゲーム「ドラゴンクエスト」のキャラクターとコラボした商品を販売したところ、「スライムかまぼこ」に関する投稿がものすごくたくさん集まりました。

 

▲「スライムかまぼこ」の画像が数多く投稿された

普段の食卓に「かまぼこ」を並べていただいた投稿も少しずつ増えており、2023年には「#かまぼこのある暮らし」が付いた投稿は1000件を突破しました。

――顧客の投稿を参考にすることはありますか?

お客さまの「かまぼこ」を用いた食卓を拝見させていただき、私たちの投稿を作る際の参考にさせていただくことがあります。

お客さまのシーンを参考に、こういうシーンならこういうスタイリングが合うんじゃないかと考え、投稿を作成させていただいています。

<ECサイトにUGC掲載、滞在時間アップ>

――UGCを活用するために「visumo」を選んだ理由は?

当社では「鈴廣かまぼこ」だけではなく、「箱根ビール」や複合施設「かまぼこの里」など複数のブランドやサービスを展開しています。

他のツールの場合、複数のブランドを扱おうと思うと、キャンペーンが増えるごとに課金されてしまうことがあります。費用負担が大きくなってしまうと、続けられない可能性があります。

「visumo」は複数のキャンペーンを立ち上げても料金が変わらず、いろいろな訴求を一元管理できる点が決め手になりました。

――インスタグラムやUGCを積極的に活用した成果は?

「#かまぼこのある暮らし」の投稿は0件からスタートし、1000件以上に増えたのは大きな成果だと思っています。

「visumo」を活用することで、当社の投稿だけではなく、お客さまの投稿もECサイトなどに活用することができています。ECサイトの滞在時間は伸びていると思います。

UGCがECでの購入促進につながっているかについては、あまり細かく見てはいません。そこを指標にすると、疲弊すると思いますし、当社は実店舗が強い事業体でもあるので、必ずしもECだけで購入されるわけではありません。

「#かまぼこのある暮らし」が付いた投稿には、他社の商品を紹介しているケースもあります。当社としてはそこに制限は設けておらず、かまぼこ業界全体をいかに底上げして、盛り上げていけるかを考えています。

かまぼこ業界全体が引き上がっていき、さまざまなメーカーさんのかまぼこを召し上がっていただき、最終的に「やっぱり鈴廣のかまぼこはおいしいよね」と思っていただければよいと考えています。

――今後、強化していきたいコンテンツや情報発信の取り組みは?

動画の投稿はこれから力を入れていきたいと思っています。まずはレシピに合わせて動画を投稿していきたいと考えています。レシピは画像で伝えようとするとページをだいぶ縦スクロールしていかないといけなくなり、見にくいので、動画で見せられたらいいと思っています。

レシピ以外にも動画で食べ方やアレンジを伝えたり、「かまぼこ」を食べるシーンを見せたりもしていきたいです。晩酌の時、ご飯に合うなどいろいろなシーンに合わせて動画を作成して出すということもやりたいですね。 

▲イラストやメッセージを焼き入れることができる「プリかま」

また、「かまぼこ」にイラストやメッセージを焼き入れることができる「プリかま」専用のインスタグラムのアカウントも立ち上げました。「プリかま」に関する投稿もECサイトなどに掲載し、こういったサービスがあることも伝えていきたいと思っています。

■「鈴廣オンラインショップ」

https://ec.kamaboko.com/shop/

■「かまぼこのある暮らし」

https://www.kamaboko.com/column/

■ビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo」

https://visumo.asia/