【厚生労働省】賃上げでも苦しい台所事情 大臣がパーティー開催を釈明

厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金が前年同月比1.1%増となり、27カ月ぶりにプラスに転じた。夏のボーナスの増額が名目賃金を押し上げたことに加え、武見敬三厚労相が陣頭指揮を執った約30年ぶりとなるインフレ下での診療報酬改定も寄与した。

 6月の毎月勤労統計調査の結果を産業別に見てみると、「医療・福祉」は前年比プラス1.6%だった。今回の診療報酬改定は賃上げが最大のテーマとなり、医療従事者のベースアップに充てるための加算措置が盛り込まれた。保険局幹部は「医療業界は裾野が大変広いため、診療報酬による賃上げ効果の影響は今後も続くのではないか」と胸を張ってみせた。

 武見氏は就任当初、日本医師会の政治団体「日本医師連盟」から支援を受けていることから、「診療報酬改定はお手盛りになるのではないか」との批判を受けていた。しかし、先の保険局幹部は「大臣は診療報酬改定で賃上げだけでなく、日医が嫌がった生活習慣病の管理料の適正化などにも切り込んだ」と強く反論する。

 診療報酬改定が狙い通り賃上げにつながったことで大きく株を上げたかのように見える武見氏だが、事務所の台所事情は苦しいらしい。大臣規範で在任中の大規模なパーティーの自粛を求められている中、7月末に東京都内で政治資金パーティーを開催。政治資金パーティーを巡っては、自民党安倍派の議員がパーティー収入をキックバック(還流)して「裏金」にしていた問題などが発覚し、国民の政治不信を招いている。

 このため、武見氏は、「(パーティーを開催しなければ)事務所の金庫は7月中旬で全くの空になるところだった」、「背に腹は代えられない」などと釈明。せめてもの救いは、武見氏が党内で唯一裏金づくりに関与していなかったとされる麻生派の所属だったことだろう。

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