三井不動産グループで企業の災害時の事業継続能力強化を支援するアンドレジリエンスは8月28日、「災害時行動力の見える化ツール」を活用して企業・組織の災害時の行動力と行動課題を点数化した結果について公表した。その結果、現状で平均点は46.8点と人命安全確保も十分にできないレベルであることが明らかになったという。

  • 調査結果の概要

    調査結果の概要

災害時行動力の見える化ツールの概要

同社が提供する災害時行動力の見える化ツールは、社員が災害時に求められる行動にどれだけ気付いたかを点数化するツール。受講者は災害発生時の出来事についてシナリオ動画視聴を通じて仮想的に体験しながら、発生した出来事に対してどのような行動を取るかを具体的に書き出す。シナリオ動画終了後に取るべき行動のチェックリストが表示され、自身が書き出した行動をチェックリストに従って採点すると、行動力が100点満点で数値化される仕組み。

災害時の対応は人命安全確保すら危うい状況

災害時行動力の見える化ツールを用いて、日本の企業で働くビジネスパーソン2万693人の災害時行動力を採点した結果、平均点は100点満点中46.8点だった。つまり、この点数は取るべき行動のうち半分も書き出せなかったことを表しており、災害時行動力は初心者レベルに相当するという。

初心者レベルは、災害発生時に大混乱に陥り対応は全て後追いとなり、人命安全確保も必要な対応ができないという判定。ほとんどの企業や組織では人命安全確保のために必要な行動力が備わっていない状況であることが明らかになった。

BCP対策の有無では点数に差なし

勤務先のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)策定の有無について回答があった社員のデータを比較すると、策定している企業・組織の平均点が47.9点(n=3675)で、未策定が47.7点(n=1463)とほとんど差がなかった。従業員規模別に比較しても点数に大きな差はなく、従業員数1000人を超える企業の平均点は49.6点(n=2160)、100人未満の企業の平均点は48.0点(n=4830)だった。

災害発生直後に取るべき行動について、チェックリストにある行動のうち書き出せた行動の割合(回答率)を12項目に分けて比較すると、「避難誘導」「対応体制の設置」「応急救護の実施」など人命の安全確保に直結する項目の回答率は39%だった。

これらの項目は多くの企業でルール化やマニュアル化されていると考えられるが、災害を体験として実感していない中でマニュアル文章の情報を発信するだけでは、社員一人一人に対して浸透しないことがうかがえる。